アメリカ国家情報長官トゥルシー・ガバードが辞任するそうだ。
これまでの彼女の活躍を高く評価してきた私としては残念だが、ご家庭の事情とあれば仕方がない。ご家族の幸せを祈念したい。
国家情報長官(DNI)とは、18ある米国の情報機関を統括する立場である。トランプ政権では、過去の情報機関の不正を調査し、機密を解除して真実を国民に明らかにすることが主な任務だ。ガバードが率いているディレクターズ・イニシアティブ・グループ、略してDIGは、その中核を担う特別チームだった。
ところが、このDIGの活動は政府内の情報機関から執拗な妨害を受けていた。CIAがDIGの政府コンピューターですべてのキーストロークを追跡・監視していたという報道は、その実態を象徴している。透明性を求めるチームが影から監視されるという皮肉。まだまだディープステートと呼ばれる戦争屋の手先は、あちこちに潜んで抵抗を続けていることがよくわかる。
今回は、この戦争屋の動きについて、歴史的事実と現在進行形の事例から論考してみたい。
トゥルシー・ガバードが暴いたオバマのクーデター
ガバードは2025年7月19日、Fox Newsの番組に出演し、機密解除した文書について詳しく語った。
2016年選挙の時期、情報機関の評価は一貫していた。ロシアには米国大統領選の結果を変える能力も意図もなかった。トランプが勝利した後も、この評価は変わらなかった。しかし、12月初旬に作成された大統領日次情報の草稿が、大統領に届けられる直前に突然差し止められた。
その翌日、オバマ大統領は国家安全保障会議の幹部を集めた。そこで「ロシアがどのように影響を与えたか」を詳述する文書を作成するよう指示した。これが2017年の情報コミュニティ評価報告書の基盤となった。
ガバードは明確に指摘した。
これはオバマ政権が情報を捏造し、政治的に利用した証拠である。そして、数年にわたる自国へのクーデターの始まりだったと。モラー特別捜査、2回の弾劾、トランプ本人と家族への攻撃、側近の逮捕・収監。これらすべての根底に、オバマ政権が選挙結果を受け入れなかった事実があったという。
彼女はさらに、イラク戦争との類比を挙げた。ブッシュ政権が大量破壊兵器の存在を捏造したように、今回は民主共和制の根幹を揺るがす反逆的な陰謀だったと。すべての文書は司法省に移送され、司法長官が調査を進めている。
英国情報機関の関与も明らかになった。元MI6要員クリストファー・スティールの作成した報告書がFBIの捜査根拠に使われ、オバマ政権が英国経由の情報を活用した経緯が解除文書で示された。
この一件は、単なる過去の話ではない。現職の国家情報長官が、政権内の抵抗勢力と対峙しながら真実を暴こうとしている捜査である。
戦争屋の歴史的系譜:偽旗作戦の連続
こうした情報操作は、決して今回が初めてではない。
戦争屋は繰り返し、同じ手口を使って戦争や対立を仕掛けてきた。
ベトナム戦争の契機となった、1964年のトンキン湾事件が典型例だ。
8月2日には実在の衝突があった。米駆逐艦マドックスが北ベトナムの魚雷艇と交戦した。しかしこの事件の背景には、米政府が支援した南ベトナム軍による沿岸攻撃作戦が直前に行われており、北ベトナムの反応を引き起こした挑発の要素が強かった。国防長官ロバート・マクナマラは議会でこの作戦との関連を当初否定・矮小化していた。
さらに8月4日の第二の攻撃は実際には発生していなかった。悪天候によるレーダー誤認と通信の混乱が原因だった。現場指揮官のジョン・ヘリック大尉自身が直後に「多くの報告に疑念がある」と上申していたにもかかわらず、この情報は十分に伝えられなかった。
国家安全保障局は通信情報を選択的に解釈し、攻撃があったように報告をまとめ、国防長官ロバート・マクナマラは議会に誤った情報を与えた。これによりトンキン湾決議が可決され、ベトナム戦争が本格化した。
後年、マクナマラ本人はドキュメンタリー『フォグ・オブ・ウォー』で事実を認めた。第二の攻撃はなく、判断が誤っていたと語っている。国家安全保障局の公式報告書も、情報が主張に合わせて操作されたことを明らかにした。戦争拡大の口実として利用された典型的な偽旗作戦だった。アメリカ兵約5万8千人、ベトナム側は300万人前後の犠牲者を出した作戦だ。
2003年のイラク戦争も同じ構造だった。ブッシュ政権はイラクに大量破壊兵器が存在すると強く主張した。コリン・パウエル国務長官は国連安全保障理事会で、小さな瓶を手に持ちながら「イラクは大量破壊兵器を隠している」と演説した。
しかし、戦争終了後、大量破壊兵器は見つからなかった。パウエル本人は後にこの演説を「自分の記録に残る汚点」と呼び、「重大な情報失敗だった」と後悔を表明した。捏造情報が戦争を引き起こし、数十万人の死者と中東の混乱を生んだ。こうした捏造は現実の人生を大きく変える。過ちを認めれば済むような罪ではない。
そしてロシアゲートは、この系譜の最新版である。情報操作で政敵を攻撃し、戦争や政治的利益を生み出す。戦争屋にとって、戦争や対立は単なるビジネスであり、権力維持の道具に過ぎない。
現在進行形:台湾有事を煽るシンクタンクとメディア
イラン戦争とウクライナ戦争で敗北しつつある今、戦争屋は必死に台湾有事を盛んに煽っている。
主要なシンクタンクの多くが、中国による侵攻や封鎖の可能性を警告し、軍事的な抑止強化を主張する。
戦略国際問題研究所(CSIS)は2023年のシミュレーションで、中国の侵攻を撃退できるものの、米軍に数十隻の艦船と数百機の航空機、数万人の死傷者が出ると分析した。
ヘリテージ財団は兵器と燃料の早期枯渇を指摘し、経済損失を巨額と試算する。
他にも新アメリカン・セキュリティセンターは台湾が無人機で海峡を防衛する戦略を提唱し、ランドコーポレーションやハドソン研究所なども軍拡と同盟強化の必要性を強調している。
これらのシンクタンクが繰り返し警告する中国の台湾侵攻理由は、主に三つとされる。
一つ目は、中国が台湾を核心的利益と位置づけ、武力行使も排除しない統一意志が強いこと。
二つ目は、中国の軍事力が急速に向上し、2027年頃に準備が整う可能性を指摘していること。
三つ目は、台湾の民主化と米国との軍事協力深化が北京の焦燥感を高めていることだ。
しかし、これらの主張は現実主義派から見て、かなり強調されすぎた脅威論だと言える。
実際には中国にとって全面侵攻は自殺行為に近く、経済的自滅や核エスカレーションのリスクが極めて高い。こうした「侵攻が目前」というナラティブ自体が、過去の偽旗作戦と同じように、軍事予算や防衛産業の利益を正当化するための情報操作の延長線上にあるように見える。
そして、ここに重大な問題がある。これらのシンクタンクの多くは、国防産業企業から資金提供を受けている。利益共同体だということだ。
クインシー研究所の2023年6月の分析によると、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナルの3紙におけるウクライナ戦争関連報道で、シンクタンクへの言及は合計1,247件あった。そのうち国防産業系シンクタンクは1,064件と全体の85%を占め、非資金系のシンクタンクはわずか147件(12%)に過ぎなかった。つまり、メディアは国防産業の資金を受けたシンクタンクの声を、非資金系の実に7倍以上引用していたことになる。
調査対象となった27のシンクタンクのうち21(77%)が国防セクターから資金を受け取っており、上位10機関に至ってはすべてが国防マネーと結びついていた。戦争が近づけば近づくほど、彼らの資金源である国防産業は儲かる仕組みだ。
一方、トランプ政権の2025年国家安全保障戦略は異なるトーンを示している。中国を競争相手と位置づけ、経済関係の再均衡と相互利益を優先する。台湾有事については地位変更を支持しないとしながらも、全面的な軍事衝突を避け、取引の余地を残す現実的な姿勢だ。
スティムソンセンターやクインシー研究所のような現実主義派は、中国にとって全面侵攻は自殺行為に近く、脅威を過大に評価すべきではないと指摘する。トランプ本人も、中国を敵ではなく競争相手と呼び、明確な軍事防衛の約束を避けてきた。5月のトランプ訪中時のシーンは今でも印象深い。
戦争屋は諦めない
戦争屋は諦めない。彼らは情報操作と脅威の煽りで、常に新しい敵を作り出す。トンキン湾事件からイラク大量破壊兵器、ロシアゲート、そして次は台湾有事だ。
しかし、トランプ政権の機密解除努力は、少しずつ光を当て始めている。ガバードが辞任しても、DIGの成果は司法プロセスで検討されている。DNI後任のアーロン・ルーカスはトランプが信頼する元CIAの猛者だ。CIAの手口は知り尽くしているに違いない。
さらに、衝撃的な事実をお伝えすると、トランプ政権の主要な高官、マルコ・ルビオ国務長官、ピート・ヘグセス戦争長官やステファン・ミラー副首席補佐官達は米軍基地内に住んでいる。異例の事態だが、それだけ危険な仕事を闘っているということだ。
みなさんには、メディアの煽りに簡単に乗らず、自分で一次資料を確認してほしい。戦争屋が一番恐れるのは、国民が目を覚ますことだ。世界は、まだ混沌としているが、真実は少しずつ姿を現している。
参考文献
Truth Social (2026/05/22) @realDonaldTrump Post
トランプ大統領がトゥルシー・ガバード国家情報長官の辞任を正式に発表したTruth Social投稿。彼女の功績を称えつつ、夫の病気を理由に辞任を受け入れたことを明らかにし、後任としてアーロン・ルーカスを代行国家情報長官に指名した内容。
https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/116619437706453945
Independent Sentinel (2026/05) Herridge Report: CIA Tracked Collected Communications of DNI Gabbard
キャサリン・ヘリッジによる報道で、CIAがトゥルシー・ガバード率いるDIGの政府コンピューター上でキーストロークを追跡・監視していた疑惑を詳細に伝えた。本文ではDIG活動への妨害工作とディープステートの抵抗の象徴として参照。

BizPac Review (2026/05/23) Rand Paul: CIA Appears to Be Illegally Spying on DNI Chief Gabbard’s Team
ランド・ポール上院議員委員会でのジェームズ・アードマン3世証言を基に、CIAのDIG違法監視疑惑を報じた記事。本文のCIA妨害工作部分の裏付け。

Fox News (2025/07/19) DNI Tulsi Gabbard on Russia Investigation
トゥルシー・ガバード国家情報長官のFox & Friends Weekendインタビュー。オバマ政権によるロシアゲート情報捏造とクーデターの詳細を本人が語った核心インタビュー。
https://www.foxnews.com/politics/new-russiagate-evidence-directly-point-to-obama-doj-decide-criminal-implications-gabbard
NPR (2025/07/21) Trump, Gabbard and the revisiting of Russian interference in the 2016 election
トゥルシー・ガバードがオバマ政権による2016年ロシア干渉インテリジェンスの「製造」を非難した動きを報じた記事。本文のロシアゲート関連でガバードの主張を補強。
https://www.npr.org/2025/07/21/nx-s1-5475171/trump-gabbard-russia-2016-election
NSA (2005/11/30) Skunks, Bogies, Silent Hounds, and the Flying Fish: The Gulf of Tonkin Mystery, 2-4 August 1964
ロバート・J・ハニョクによる公式報告書。トンキン湾事件でのNSA情報操作と8月4日攻撃の不存在を公式に分析。本文の偽旗作戦の歴史的系譜で一次資料。
CSIS (2023/01/09) The First Battle of the Next War: Wargaming a Chinese Invasion of Taiwan
中国の台湾侵攻シミュレーション24回を実施し、高コストを指摘したレポート。本文のシンクタンクによる台湾有事警告の代表例。

Heritage Foundation (2026/01/20) TIDALWAVE: Strategic Exploitation and Sustainment in a Prolonged Conflict with China
ヘリテージ財団が実施したAIシミュレーション「TIDALWAVE」レポート。中国との長期紛争で米軍の兵器・燃料が数週間で枯渇する可能性や、台湾有事での巨額経済損失を分析し、抑止力強化の緊急性を強く主張した。台湾有事煽りのhawkishレポート。
https://www.heritage.org/tidalwave
Quincy Institute for Responsible Statecraft (2023/06/01) Defense Contractor Funded Think Tanks Dominate Ukraine Debate
国防産業系シンクタンクがメディア引用で85%を占める構造を、1,247件の報道分析で明らかにしたレポート。

Stimson Center (2025/09/03) Rethinking the Threat: Why China is Unlikely to Invade Taiwan
中国の台湾侵攻は極めて低確率であり、ワシントンの脅威論が過大評価されていると指摘した現実主義派のレポート。本文の台湾有事に対する反対意見・慎重論の裏付け。
https://www.stimson.org/2025/rethinking-the-threat-why-china-is-unlikely-to-invade-taiwan
White House (2025/12) National Security Strategy 2025
トランプ政権の国家安全保障戦略。中国を競争相手とし、経済再均衡を優先する現実主義的トーンを記した公式文書。
https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2025/12/2025-National-Security-Strategy.pdf
The Atlantic (2025/10/30) Top Trump Officials Are Moving Onto Military Bases
トランプ政権の主要閣僚らが一般の住宅街ではなく軍事基地内に移住している異例の動きを詳細に報じた記事。Marco Rubio国務長官、Pete Hegseth国防長官、Kristi Noem国土安全保障長官、Pam Bondi司法長官、Stephen Miller副首席補佐官などがFort McNairやJoint Base Anacostia-Bollingの軍施設内に居住し、脅威や抗議活動への懸念からセキュリティを強化していると指摘。これまで文民閣僚が軍基地内に住むことは極めて稀だったと強調している。




