英国スパイは二度詐欺を働く
「困った時のロシア頼み」、もはや西側情報機関の伝統芸か…
かつてドナルド・トランプをモスクワの言いなりであるかのように仕立て上げようとして、アメリカ政治を数年にわたり空転させた英国情報部MI6の元ロシアデスク責任者、クリストファー・スティール。現在は民間調査会社の経営者という肩書きを持つ彼が、2024年2月3日のTimes Radioインタビューにおいて、再び世間を呆れさせる新説をぶち上げた。
ターゲットは、英国王室や元アメリカ大統領、ビル・ゲイツなどの大富豪までも巻き込み、どこまでスキャンダルが広がるのか想像もつかないあのジェフリー・エプスタインである。
「エプスタインはソ連の資産」という荒唐無稽な新説
スティールは、自身が「アメリカ当局に近い情報源」から得た話として、エプスタインの活動が1970年代のニューヨーク・ブライトンビーチにおけるロシアの組織犯罪にまで遡ると主張している。さらに1980年代には、メディア王ロバート・マクスウェルを通じてソ連共産党の裏金洗浄に関与し、エプスタインの謎多き富の大部分はソ連からもたらされたものだと言い張っている。
彼の筋書きはこうだ。エプスタインはロシアによって採用されたコンプロマートと呼ばれる弱みを握って脅迫する工作を行うエージェントであり、有力者を性の罠に嵌めてはおそらくその証拠をモスクワに提供していた。つまり、世界を震撼させたエプスタイン島の乱行は、すべてプーチンの影がちらつく壮大な諜報工作だったというわけだ。
だが、ここでもスティールの主張は致命的な矛盾を露呈する。彼がロシアへの架け橋として挙げたロバート・マクスウェルは、インテリジェンスの世界ではイスラエルの情報機関モサドの有力な協力者としてあまりにも有名だからだ。葬儀がイスラエルで国葬に近い形で営まれたほどの人物を、わざわざ「ソ連の資金洗浄役」として引っ張り出すその支離滅裂さ。スティールにとっては、事実がどうあれ、不都合な対象はすべて「ロシア」というラベルで上書きしてしまえばいいという、短絡的な思考が透けて見える。
使い古された「ロシア詐欺」という前科:民主党の買収工作
しかし、この男の言葉を真に受ける者が今さらいるのだろうか。我々は、2016年の米大統領選を泥沼に陥れたスティール文書のペテンを忘れてはいけない。当時の彼は、トランプがモスクワのホテルで下品な行為に及んだという、出所不明の卑猥なデマを並べ立てた。
この件は、2023年に公開されたダーラム報告書によって、完全に勝負がついている。スティールの文書は、クリントン陣営と民主党が法律事務所を通じて調査会社フュージョンGPSに投じた計102万ドルもの巨額資金によって捏造された、共同事業に過ぎなかったことが法的に暴かれた。スティール自身も、この仕事の対価として16万8,000ドルの報酬を受け取っている。
さらに興味深いことに、FBIはスティールに対し、文書の内容を裏付ける証拠を提示できれば最大100万ドル(約1億5,000万円)を支払うという破格の条件を提示していた。しかし、スティールはついに何一つとして証拠を出せず、この巨額懸賞金を手にすることはできなかった。後に民主党側は、これらの調査費を法務費用と偽って計上した選挙法違反を認め、連邦選挙委員会に罰金を支払っている。
トランプはこの一件を「ロシア、ロシア、ロシア!」と連呼するフェイクメディアと民主党による魔女狩りだと激しく毒づいてきたが、実際その通りだったのだ。
なぜ今「ロシア」なのか ― シティの強欲と英国式スピンの深淵
アメリカ政府に公式に否定され、自身の信用が失墜しているにもかかわらず、なぜ彼は再びこのロシア産ナラティブを持ち出してきたのか。そこには、ロシアフォビアを長年飼い慣らしてきた英国情報部特有の、鼻につく情報操作の臭いが漂っている。
英国情報部にとって、ロシアフォビアは単なる感情ではない。それは大英帝国時代、中央アジアの覇権を争ったグレート・ゲームの頃から、自国の軍事予算を確保し、外交的失策を隠蔽し、国民の目を外敵に向けさせるために丹念に培養されてきた国家戦略である。
エプスタイン事件で今まさに窮地に立たされているのは、ロシアではなく英国のエスタブリッシュメントだ。英国王室のアンドリュー王子や、労働党の大物ピーター・マンデルソン元閣僚といった面々が、エプスタインとの不適切な関係から逃げ場を失っている。
特にマンデルソンに至っては、その強欲さとアホさ加減が際立っている。彼は2008年の金融危機の際、ロンドン金融街、いわゆるシティの自堕落な金融機関を救済するために、惜しげもなく国民の血税を注ぎ込んだ。その裏で、彼はエプスタインに対して政府の内部情報を流していた疑いまでもたれている。国民には痛みを強いつつ、自分はシティの利権とエプスタインのどす黒いネットワークを股にかけ、蜜月を楽しんでいたというわけだ。
スティールが「FBIは情報を隠していた」と声を荒らげる姿は、これら英国特権階級の腐敗から目を逸らさせるための必死のパフォーマンスだ。「我々が道を踏み外したのは邪悪なロシアの工作のせいで、それを教えてくれなかったアメリカが悪い」という、もはや子供の言い訳にも劣る責任転嫁である。
「使い捨てのデマ発生装置」と英国エリートのパニック
それにしても、一度ならず二度までも同じ手口で世界を欺こうとするクリストファー・スティールという男の存在は、あまりに滑稽だ。彼はもはや誇り高き情報部員などではなく、エスタブリッシュメントの都合でいつでも切り捨てられる「使い捨てのデマ発生装置」に成り下がっている。
英国のインテリジェンス界隈には、「洗練されたナラティブさえ作れば、愚かな大衆とアメリカ人は何度でも騙される」という、かつての植民地支配者さながらの傲慢な特権意識が今なお染み付いている。だが、このあまりに稚拙なスティールのお芝居が露呈しているのは、他でもない。シティをはじめとするイギリスのエスタブリッシュメントが、エプスタイン事件の余波に相当パニクっているということの証明なのだ。
「証拠はあるが、まだ公開されていないだけだ」という彼の常套句を信じる者は、もはやこの世に存在しないだろう。エプスタインもロシア、トランプもロシア。次は何だろうか。英国の飯がまずいのも、天気が悪いのも、あるいは沸騰した直後の紅茶にミルクを入れ忘れるという国家的な失態も、すべてはプーチンの陰謀だと言い出す日が来るのも、もうすぐかもしれない…
参考文献
LBC (2026/02/04) Former MI6 Spy Insists Jeffrey Epstein Was ‘Recruited by Russian Organised Criminals’ | Christopher Steele クリストファー・スティール氏(元MI6ロシアデスク長)が、エプスタインが1970年代からロシア系組織犯罪にリクルートされ、その背後にロシアの影があると主張したインタビュー。アメリカ情報機関の評価を基に、Epsteinの活動がBrighton Beachのロシア組織犯罪と結びつき、Trumpに対するkompromatの可能性が高いと指摘。根拠の乏しい「ロシア関与説」を繰り返す手法に対し、既存のロシアフォビアを政治的に利用する狙いがあると批判的に捉えられている。
https://www.lbc.co.uk/article/christopher-steele-epstein-trump-russia-5HjdRrM_2
Heritage Foundation (2023/05/16) The Durham Investigation: A Primer
ダーラム特別検察官による調査報告書の要点をまとめた解説。2016年の米大統領選を巡り、クリントン陣営や民主党がスティール文書などの捏造工作に深く関与していた事実を整理している。

U.S. Department of Justice (2023/05/12) Report on Matters Related to Intelligence Activities and Investigations Arising Out of the 2016 Presidential Campaigns (Durham Report)
米司法省が公開したダーラム報告書の全文。FBIがいかに政治的バイアスに基づいた調査を行い、スティール文書という「根拠なき情報」を鵜呑みにして大統領選に介入したかを公的記録として証明している。
