トラステッド・ニュース・イニシアティブ(TNI)という組織をご存じだろうか?
2019年、🇬🇧英国放送協会(BBC)が招集した、大手報道機関と巨大IT企業の業界連携だ。BBCの公式サイトによれば、その定義は「生命や民主主義の健全性を脅かす有害な偽情報を、リアルタイムで止めるための世界的パートナーシップ」、だそうだ。
活動の中身は三つある。参加メディア同士が、危険と判断した言説を互いに知らせる。
検索・動画・SNSを運営する企業が、その知らせを受けて急いで審査し、表示を落とす。つまり、検索結果やタイムラインでの順位を下げ、ときには削除する。
そして参加メディアは、その言説を自社の記事や番組で広めない。

北大西洋条約機構(NATO)は人間の脳🧠を新たな作戦領域に位置づけたが、その戦場に立つのは軍だけではない。読者の画面に何が先に届き、何が届かないかを決める者も、同じ戦場🪖にいる。
この連絡網が何を「危険」と判断したのか、その一覧も基準も、発足から7年たった今まで一度も公開されていない。
誰が、何を基準に、どの言説を「危険」と決めてきたのか。そしてその判断は今も続いているのか。認知戦🧠の重要な部品であるこの仕組みの実態を、今回はじっくり論考してみたい。
「信頼」の連携は、いつ、誰が、何のために組んだのか
2019年6月、当時の🇬🇧BBC会長トニー・ホールは、ロンドンのBBC本部に大手報道機関と巨大IT企業の幹部を集め、非公開の会合を開いた。
名前は「信頼できるニュースのサミット」である🤔
翌7月、ホールは英国外務省が主催した報道の自由をテーマとする国際会議で、この会合の存在を自ら明かし、BBCの招集力でニュースの誠実さを守る世界同盟を作ると宣言した。報道の自由を語る場で、扉を閉ざした会合の成果を誇ったことになる。
同年9月7日、BBCはこの連携を正式に発表した。発足理由として名指ししたのは、同年春のインド総選挙などで目立ったSNS上の偽情報である。最初に合意した作業は、生命や選挙を脅かす偽情報の早期警戒、メディア教育、投票情報の共有の三つだった。
対象はそこから段階的に広がっていく。
2020年3月に新型コロナウイルス🦠関連の「有害情報」が加わった。
同年7月には🇺🇸米大統領選に向けて警戒を強め、AP通信とワシントン・ポストが新たに参加した。
同年12月、ホールの後任としてBBC会長に就いたティム・デイビーが主催した会合で、焦点は新型コロナワクチン💉をめぐる情報へ移った。
2022年11月にはアジア太平洋地域の連絡網が設けられ、🇯🇵日本からはNHKが加わっている。
2023年3月の会議の時点でBBCが公表している会員は23の組織で、国別に並べると次の通りだ。
🇬🇧英国:BBC、フィナンシャル・タイムズ、ロイター・ジャーナリズム研究所
🇺🇸米国:AP通信、ワシントン・ポスト、グーグル/YouTube、メタ、マイクロソフト、ツイッター、ブラウン大学インフォメーション・フューチャーズ・ラボ
🇫🇷フランス:AFP通信
🇨🇦カナダ:CBC/ラジオ・カナダ
🇪🇺欧州:欧州放送連合
🌐国際通信社:トムソン・ロイター
🇮🇳インド:ザ・ヒンドゥー、インディアン・エクスプレス、NDTV
🇵🇰パキスタン:ドーン
🇮🇩インドネシア:コンパス
🇰🇪ケニア:ネイション・メディア・グループ
🇦🇺オーストラリア:ABC、SBS
🇯🇵日本:NHK
報道機関だけでなく、検索🔎のグーグル、動画のYouTube、SNSのメタとツイッター、そしてマイクロソフトが同じ名簿に並んでいる。

世界の読者の画面を握る企業群であり、ここがこの連携の要である。記事を書く側✒️と記事を届ける側📺📱が、同じ席に座ったのだ。
ホールは当時、BBC会長であると同時に、欧州各国の公共放送が加盟する欧州放送連合の会長も務めていた。受信料で運営される欧州の公共放送の代表が、米国の巨大IT企業と通信社を束ねた形である。
2020年3月には欧州放送連合自身が、重大な警報を加盟する公共放送へ再配信すると発表している。BBC一社の企画ではなく、🇪🇺欧州の公共放送網をまるごと国際的な連絡網につないだ連携だった。
実務を設計したのは、BBCで4代の会長の首席補佐官を務めた、ジェシカ・セシルである。セシルはTNIの創設者で初代ディレクターを務めたが、興味深いのはその後の経歴だ。

BBCを離れたのち、🇬🇧英国王立国際問題研究所、通称チャタムハウスというグローバリスト・シンクタンクの評議員に就いた。さらに、同研究所の教育部門のフェロー、米系シンクタンクであるランド研究所の欧州部門の顧問、英米の非公開会議を主催するディッチリー財団のフェローを兼ねている。チャタムハウスの公式略歴は、今もTNIの創設者という肩書をそのまま載せている。
チャタムハウスそのものはTNIの会員名簿に入っていない。ところが、チャタムハウスが会費を受け取る法人会員の名簿を開くと、景色が変わる。最上位の会員には英国外務省と国防省が並ぶ。その下の階層には🇬🇧BBC本体と、金融街を治める自治体シティ・オブ・ロンドン🇬🇧が名を連ね、さらに下には🇬🇧イングランド銀行が入っている。
連絡網を招集した公共放送📺、その設計者を評議員に迎えたチャタムハウス、英国の外交と防衛、そして金融街が、ロンドンの同じ会費名簿に載っているわけだ。
TNIは条約でも政府機関でもなく、任意の業界連携にすぎない。それでも、どの言説を危険と呼ぶかを決める連絡網の起点は🇬🇧ロンドンにあった。
これを偽情報から市民を守る善意の協力と呼ぶのは、人が好すぎる読み方だろう🙄
危険🚨の判断理由は非公開
TNIの仕組みは、三つの動作でできている。
第一に、会員が見つけた「危険だ🚨」を、ほかの会員とプラットフォーム企業に先に知らせる。ここでいう「先に」とは、その言説が読者のタイムラインに広がる前、という意味だ。
第二に、知らせを受けた報道機関は、その言説を自社の記事や番組で使わない。これが再配信の自制である。
第三に、🚨知らせを受けたプラットフォーム企業は、自社の利用規約に照らして、表示を落とすか残すかを急いで判断する。TNIが削除ボタンを押すわけではない。ボタンを持つ企業の手元に、押すべき候補が先に届く仕組みだ。
三つの動作のどれを取っても、何かを禁止しているわけではない。ただ、読者の目に届く前に、危険だと警報された言説を見えなくしている。
時代も担い手も違うが、戦後の日本で連合国軍総司令部(GHQ)が行った検閲👁️も、削った跡を読者に見せないやり方だった。今度はそれが、民間の手で、国境を越えて行われている。
設計者のセシル🇬🇧は、2020年のパリ平和フォーラムで、TNIは事実確認をしないと明言した。「ガラスを割る」ような非常時に、分単位、時間単位で互いに知らせるための連絡網だ、とも説明している。真偽を確かめる作業は各社の編集判断に任せ、TNIが扱うのは流通の順番だけ、というわけだ。

問題は、その「危険」の基準がどこにも書かれていないことである。公式サイトには、次の五つのどれも載っていない。
何を危険とみなすのか?
誰が警報🚨を出してよいのか?
一件の警報🚨に対して、プラットフォーム企業がどんな措置を取ったのか?
表示を落とされた側は、どこに異議を申し立てられるのか?
後から誤りとわかった警報🚨は何件あったのか?
中身を外から確かめる手段も、制度として閉じられている。2022年8月、🇬🇧英国の情報公開を監督する情報コミッショナーは、ある開示請求に対するBBCの拒否を認めた。
請求の対象は、TNI会員との協定、会員に求める「行動への期待」を記した文書、関連するメールである。拒否の根拠は、報道目的で保有する情報を情報公開法の対象外とする、BBCに認められた特例だった。
受信料で運営される🇬🇧公共放送が招集したTNIの警報の中身🚨は、報道の自由を盾に封印されたわけだ。
責任の所在も同じように消える👻
記事の表示を落とされた発信者が抗議したとしよう。通報🚨した報道機関✒️は「知らせただけで、削除はしていない」と答え、プラットフォーム企業は「判断は自社の規約による」と答える。🇬🇧TNIそのものには、法人としての実体も決裁者もない。抑制の結果は読者の画面に一つの形で現れるのに、その言論抑制に責任を持つ者はどこにもいない。
では、🇬🇧TNI側が公式に誇る成功例はなにか?
🇬🇧BBCが繰り返し挙げるのは、2020年4月の一件である。入院中の🇬🇧ジョンソン首相が死亡したと、偽のBBCアカウントが流した。ツイッターは投稿を削除し、英国の検証団体が同日中に否定した。それでもパキスタンのテレビ局は、この偽アカウントを出典に死亡を放送している。止まった、とは言い切れない。
2020年の🇹🇼台湾総選挙も成功例に挙がる。しかし現地で偽情報に対応したのは、台湾の選挙管理当局、台湾の検証団体、そしてフェイスブックやLINEによる削除だった。ハーバード大学の研究所がまとめた事例研究にも、TNIの名は出てこない。
2020年の🇺🇸米大統領選については、セシルが翌年「最も重大な偽情報」の警報を共有したと語った。だが、どの言説をいつ止めたのかは一件も示していない。

失敗の明細が出ないのと同じように、成功の明細も出てこない。外から確かめられるのは、「うまくいった」という自己申告だけである。
ビッグテックは、削除の義務ではなく「信頼」の看板を求めた
2019年当時、🇺🇸米国のIT企業は🇪🇺欧州と正面からぶつかっていた。
前年には個人データの扱いを厳しく縛る欧州の一般データ保護規則が施行された。2019年春には報道記事の利用に対価を求める著作権指令が成立し、デジタル課税や独占禁止の調査も続いていた。どれも、違反すれば売上に比例した罰金が科される硬い法律である。グーグルもフェイスブックも、その立法には抵抗してきた。
ところが同じ企業が、2018年に🇪🇺欧州委員会が示した偽情報対策の行動規範には署名している。グーグル、フェイスブック、ツイッターが名を連ね、マイクロソフトも翌年加わった。こちらは任意の自主規制で、罰則はない。そして2019年、🇬🇧BBCが招集したTNIにも、そろって参加した。
拒んだものと乗ったものを並べると、違いは明快だ。拒んだのは、何を消すかを法律で決められ、従わなければ罰金を科される枠組みである。乗ったのは、IT業界が自分で「有害」を定義し、自分で素早く止めると宣言する枠組みである。
乗る理由もあった。2016年の🇺🇸米大統領選と🇬🇧英国のEU離脱投票のあと、議会と規制当局は、偽アカウントと宣伝が投票を歪めたとしてSNS企業を追及した。2018年には、英国の選挙コンサルタント会社がフェイスブックの利用者データを不正に使った事件も発覚している。
自社だけで何を消すかを決めれば検閲企業と呼ばれ、何も消さなければ無責任と呼ばれる。そこへ🇬🇧BBCやAP通信と同じ席に座れば、表示を落とす行為は「信頼できる報道と協力した保護」に見える。
報道側✒️は、自前では持たない情報流通の執行力を借りた。プラットフォーム企業の側は、報道ブランドの正統性🎭を借りた。上下関係ではなく、執行力と看板の交換である🙄
💰金の流れも、この交換を裏付けている。グーグルは2018年に報道支援の包括プログラムを立ち上げ、3年で3億ドルを投じると発表した。2022年にTNIがアジア太平洋へ連絡網を広げたとき、NHKを含む新規参加社の記者研修の費用を出したのも、このプログラムである。
TNI会員のロイター・ジャーナリズム研究所が毎年出す世界のニュース調査も、同じプログラムが主たる資金提供者だ。何が信頼できる報道かを論じる研究や研修の請求書が、表示の順番を決める側から出ている。
🇬🇧BBCやAP通信という報道ブランドの「信頼」を看板に掲げたTNIは、警報の対象そのものを自ら広げていった。発足時に想定していたのは、偽のBBCアカウントのようななりすましや、投票日を偽る情報といった、真偽を争う余地のない偽物だった。
それが2020年には、公衆衛生の専門家でも見解が割れていた新型コロナウイルス🦠とワクチン💉をめぐる情報にまで及んだ。
同じ時期、各プラットフォームでは、ウイルスの起源、米大統領選の郵便投票、バイデン大統領の次男ハンターのノートパソコンをめぐる報道までが、削除や表示の抑制を受けている。
新型コロナウイルス🦠の武漢研究所からの流出説は、のちに🇺🇸米情報機関が有力な可能性と認めた。ノートパソコンの記事は、🇷🇺ロシアの偽情報ではなかったことが確認されている。
このうちどれがTNIの警報を経たのかは、警報の一覧が封印されている以上、外から特定できない。特定できないように作られている👎
2024年8月26日、メタの最高経営責任者マーク・ザッカーバーグは、米下院司法委員長への書簡でこの時期の内幕を認めた。
2021年、🇺🇸バイデン政権の高官は、ユーモアや風刺を含む🦠新型コロナ関連の投稿を削除するよう数か月にわたって繰り返し求め、メタが応じないと強い不満を示した。
ザッカーバーグは、削除するかどうかの最終判断は自社にあったとしたうえで、この圧力を受けて🦠新型コロナ関連の削除基準を実際に変えたと認めている。
そして、政府の圧力は誤りであり、もっと公に反論しなかったことを悔やむ、と書いた。さらに、当時は知らなかった情報も踏まえて振り返れば、今ならしない選択もあった、と付け加えている。
バイデン政権は書簡の公開を受けて、公衆衛生のために責任ある行動を促しただけで、掲載の判断は企業が独立して行う、と反論した。しかし、応じなければ不満をぶつけてくる政権の要請を受けたうえでの判断を、独立と呼ぶのは無理がある。
書簡には、もう一つの告白がある。2020年秋の米大統領選の直前、メタはFBIから🇷🇺ロシアの偽情報に警戒するよう伝えられていた。そのため、ハンター・バイデンのノートパソコンをめぐる記事が出ると、検証が終わるまでの間その表示を落とした。
ザッカーバーグは、記事はロシアの偽情報ではなかったとして、「落とすべきではなかった」と認めている。ここでも、表示を落とす判断の手前には、政府機関からの知らせがあった。
ザッカーバーグの書簡にTNIの名は一度も出てこない。書簡が示しているのは、表示を落とすボタンに、報道からの警報、政権からの要請、自社の基準という複数の指が同時にかかっていた事実である。そして最後にボタンを押したのは自社だと、ザッカーバーグ自身が書いている。
報道は「知らせただけ」、政権は「促しただけ」、企業は「判断は自社」。三者の説明を足し合わせると、誰も責任を負わない👎
そのメタは2025年1月、第三者のファクトチェック団体との契約を打ち切ると発表したが、対象は🇺🇸米国内に限られていた。米国の外では契約が続き、🇯🇵日本でもメタは日本ファクトチェックセンターへの助成を続けている。🇬🇧BBCの会員名簿にもメタの名は今も載ったままで、脱退の発表は出ていない。
🇺🇸トランプの大統領就任の13日前、米国では手を引き、それ以外の国では同じ仕組みを回し続けているわけだ🙄
日本で加盟したのはNHKだけ⁉️
🇯🇵日本からTNIに加わったのは、NHKだけである。2022年11月、アジア太平洋地域の連絡網の設置に合わせて、オーストラリア、インド、パキスタン、インドネシアの報道機関6社とともに参加した。日本の全国紙も民放キー局も、名簿には入っていない。
NHKは総務省の検討会に出した資料で、日本のメディアとして最初にTNIに参加したと自ら書いている。2023年3月の年次会議にも出席し、生成AI、メディアの信頼性、選挙への対応を話し合ったと報告した。
加盟のあと、NHKは二つの方針を打ち出した。
一つは2023年5月、NHKの技術研究所が、写真や動画に発信元の電子署名を付ける技術規格の団体に加わったことだ。その発表文は、直前の経緯としてTNIへの加盟を挙げている。
もう一つは、2024年度からの3か年の経営計画である。軸に据えたのは「情報空間の参照点」の提供だった。真偽の定まらない情報が飛び交う中で、何を基準の位置に置くかを、NHKが先に示すという宣言である。
では、名簿にない新聞や民放は🇬🇧TNIの外にいるのか。そうとは言えない。新聞社や民放の記事の多くは、ヤフーのニュース欄や検索、YouTubeを通じて読者に届く。そしてその並び順を決めるのは、記事を書いた社ではない。
🇬🇧TNI会員であるグーグル傘下のYouTubeは、2023年8月、🏥医療情報に関する削除方針を整理した。予防、治療、ワクチン💉の安全性や成分などについて、各国の保健当局や世界保健機関の指針と食い違う内容を削除するという。日本でいえば、厚生労働省の見解と食い違う動画が削除の対象になる。この基準は、新聞社や民放が公式チャンネルに上げる動画にも、個人の発信者の動画にも、同じように適用される。
🇬🇧TNIに加盟していないヤフーも、同じ方向に動いていた。2021年8月、ヤフーは新型コロナワクチン💉に関する誤情報への対策を発表した。ニュースのトピックス欄で「デマ」を否定する記事を積極的に掲出し、「ワクチン 危険性」と検索すると、厚生労働省のサイトや専門家の解説記事が上位に出るようにした。どの記事を「デマ」とし、どの解説を上位に置くかを決めたのは、記事を書いた新聞社ではなく、ヤフーである。
判定を下す役にも、同じ企業群の資金が入っている。2022年10月に発足した日本ファクトチェックセンターは、設立時にグーグルから150万ドル、当時のヤフーから2,000万円の助成を受けた。その後はLINEヤフーとメタも資金を出している。2025年度の収入約2,617万円のうち、約2,167万円は、グーグル、LINEヤフー、メタ、国際的なファクトチェック団体の連合からの助成である。
個々の言説に判定を付けるファクトチェック団体の財布を、並び順を決めるプラットフォーム企業が支えている。近すぎる距離だ🙄
そこへ国の法律が加わった🇯🇵 2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法は、総務省が指定した大規模なプラットフォーム企業に、削除の申し出への迅速な判断と、削除対応の実績の公表を義務づけている。対象の中心は誹謗中傷などの権利侵害で、偽情報そのものを定義した法律ではない。それでも、削除の手続きを急がせる力を、国が法律として持ったことになる。
2026年7月24日、総務省はこの法律に基づく初の勧告を、グーグル、X、メタなど5社に出した。理由は、削除対応の実績を定められた通りに公表していなかったことである。
日本政府🇯🇵は、プラットフォーム企業に削除の件数を公表しろと迫っている。ところが、同じグーグルやメタが名を連ねる🇬🇧TNIでは、警報の一覧が一件も公表されていない。国内の削除には帳簿の公開が求められ、国境を越えた警報には帳簿すら存在しない。
こうして日本では、NHKが「参照点」を置き、プラットフォーム企業の世界共通の基準が並び順を決める。その企業の資金で動くファクトチェック団体が判定を付け、法律が削除への対応を急がせる。
🇬🇧TNIの名簿に載る日本の組織はNHKだけだが、名簿にない新聞✒️や民放📺も、同じ基準で並べ替えられる画面の上で記事を書いている。
盟主BBCの誤情報番組
TNIを招集した🇬🇧BBCは、自らの看板番組で「信頼」を落とすことになる。
問題になったのは、報道番組『パノラマ』が2024年の米大統領選の投票1週間前に放送した『トランプ:2度目のチャンス?』である。番組は、2021年1月6日にトランプが支持者を前に行った演説を使った。
その際、50分以上離れた二つの箇所をつなぎ合わせ、「議事堂まで歩いていく」という呼びかけと「死に物狂いで戦う」という言葉が、一続きの発言に聞こえるように編集していた。実際の演説では、その間に、議員たちを応援しようという部分や、「平和的に声を届けよう」という呼びかけが入っている。
🇬🇧BBCの内部では、この編集はすでに問題になっていた。番組の内容を監督する編集基準委員会が自ら発注した、BBCの米大統領選報道の検証が、このつなぎ方を取り上げていたのである。指摘は番組の制作陣にも伝えられたが、委員会は2025年1月と5月の二度にわたって議論しながら、正式な措置を取らなかった。
委員会の外部顧問を3年間務めた人物は、離任後の2025年、この件を含む懸念を19頁の報告書にまとめ、理事会に提出した。報告書はトランプ番組にとどまらず、パレスチナ自治区ガザをめぐるBBCアラビア語放送の偏りや、性的少数者をめぐる報道の扱いにも踏み込んでいた。
事態が動いたのは、報告書が外に漏れてからである。2025年11月6日、🇬🇧テレグラフ紙が報告書の全文を公開した。当時の🇺🇸ホワイトハウス報道官のキャロライン・レビットは同紙の取材に対し、この選択的な編集こそ、🇬🇧BBCが「完全に、100パーセントのフェイクニュース」である証拠だと語った。
3日後の11月9日、BBC会長のティム・デイビーと、報道部門の最高責任者が辞任した。
デイビーは、2020年12月にTNIの会合を主催し、警報の対象を新型コロナワクチン💉に移したその人である。レビット報道官はデイビー辞任当日、SNSに二つの見出しを並べて投稿した。一本目は🇺🇸トランプがBBCを批判した記事、二本目は🇬🇧デイビー辞任の記事で、それぞれに「ショット」「チェイサー」と添えている。英語圏のネットで、最初の出来事とその結末を並べて勝ち誇るときに使う決まり文句である。トランプが批判し、BBCのトップが辞めた。ホワイトハウスは祝杯を上げたわけだ🥂

🇬🇧BBCの謝罪は二段階で行われた。BBCには、経営と編集を率いる会長とは別に、組織を監督する理事会がある。その理事長サミール・シャーは11月10日、英下院の委員会への手紙で、編集が暴力行為を直接呼びかけたという印象を与えたと認め、「判断の誤り」を謝罪した。13日には番組のページに訂正文を載せた。編集が意図せず一続きの演説のように見せたと認め、🇺🇸トランプ本人に謝罪し、番組を二度と放送しないとした。シャーはホワイトハウスにも私信を送っている。
ただし、補償は拒んだ。BBCは、編集の仕方は心から遺憾だが、名誉毀損の根拠があることには強く反対すると表明した。
「意図せず」と🇬🇧BBCは言う。しかし元のトランプの演説は2021年から全文が公開されており、確かめる時間はたっぷりあった。気づいていながら直さなかった誤りを、意図しなかった誤りと呼ぶのは、ずいぶん都合が良い🙄
🇺🇸トランプは2025年12月、フロリダ州の連邦地裁に🇬🇧BBCを訴えた。名誉毀損と、フロリダ州の不公正取引を禁じる法律に基づき、それぞれ最大50億ドル、合わせて最大100億ドルを求めている。訴訟は今も続いており、公判は2027年2月に予定されている。
この事件とTNIの警報🚨とのつながりを示す資料は出ていない。問題になったのは🇬🇧BBCの番組の編集であり、訴えの中身も相互通報ではない。
ただ、選挙🗳️の健全性を脅かす偽情報を止めることは、🇬🇧TNIが発足時から掲げてきた看板である。2020年の米大統領選についても、「最も重大な偽情報」の警報を共有したと、自ら成果を語っている。
その招集者である🇬🇧BBCが、2024年の🇺🇸米大統領選の投票1週間前に、候補者の発言について視聴者に誤った印象を与える番組を流した。トランプの訴えも、この番組が選挙に干渉したと主張している。会員の誰かがこの番組について警報を回したのかどうかは、一覧が出ない以上、確かめる手段がない。
他者の言説には警報🚨を鳴らす側の🇬🇧BBCが、自らは視聴者に誤った印象を与えたと認めた。それでも、この誤りにはBBCの訂正文と謝罪と議会への手紙が残っており、読者はそれを読んで確かめることができる。
TNIの連携内で発せられる警報🚨には、そのどれもない。自らの検証で見つけた誤りさえ、外に漏れるまで直さなかった🇬🇧BBCが、外から一件も見えない警報を正しく運用していると信じる理由は、どこにあるのだろうか。
ロンドン市民は結構わかっているようだ👍
独禁法が問うTNIの実態👁️
🇬🇧TNIの中身を初めて法廷で問う訴えが起きたのは、2023年のことである。
原告は、ロバート・F・ケネディ・ジュニアが創設した健康団体チルドレンズ・ヘルス・ディフェンスと、独立系のサイト運営者や記者たちだ。いずれも、新型コロナワクチン💉や🇺🇸米国政治をめぐって、主流報道とは異なる発信を続けてきた。ケネディは2025年から保健福祉長官を務めている。訴えはルイジアナ州の連邦地裁で起こされ、同年9月に首都ワシントンの連邦地裁へ移された。
被告は、ワシントン・ポスト、BBC、AP通信、ロイターの4社だけである。訴状はグーグル、メタ、マイクロソフト、当時のツイッターをTNIでの協力相手として名指ししているが、被告にはしていない。実際に表示を落とすプラットフォーム企業を外し、警報🚨を出す報道機関だけを相手取った構成だ。
訴えの根拠は、米国の独占禁止法の柱であるシャーマン法の第1条である。この条文は、競争相手同士が申し合わせて取引を不当に制限することを禁じている。
原告の主張は次の通りだ。被告らは🇬🇧TNIという申し合わせに加わり、新型コロナウイルス🦠の起源やワクチン💉、選挙手続などで自分たちの報道と食い違う発信を、主要なプラットフォームから締め出した。その結果、原告は読者と広告収入を失った。これは編集上の協力ではなく、競争相手の集団排除である。原告はそう訴え、損害の3倍の賠償を求めている。
被告は、🇬🇧TNIは偽情報についての情報共有にすぎないと反論している。危険だと知らせただけで、削除するかどうかは各プラットフォームの既存の審査が決めた。どの見解が勝つかは言論の問題であり、独禁法でいう損害にはあたらない、という主張だ。
被告の反論には、見落とせない一文がある。司法省の意見書が引用した被告の書面によれば、被告の主張は次のようなものだった。訴えの内容から言えるのは、せいぜい「何を誤情報と数えるかを共同で決め」、一部の会員が特定の投稿に印を付けたことにすぎない。その後はプラットフォームが自社の方針で動いた。被告は「共同で決めていない」とは言っていない。共同で決めても違法ではない、と言っているのである。
では、何が誤情報と数えられたのか。訴状は、標的にされた主張として次のようなものを挙げている。新型コロナウイルス🦠は人工的に作られた可能性がある、一部の層にとっては季節性インフルエンザより危険とは言えない、マスク😷や距離の確保は感染拡大を防がない、感染によって得た免疫はワクチン💉より有効だ、といった主張である。
いずれも、専門家のあいだで見解が割れていた論点だ。会員が共同で決めた「誤情報」の中には、こうした論点が含まれていたことになる。
しかも、「知らせただけ🚨」という被告の説明は、TNI自身の言葉とも食い違う。🇬🇧BBCの公式説明は、三つの動作を一つの連携として掲げている。会員が互いに知らせること、プラットフォームが速やかに審査すること、報道側が再配信しないことだ。知らせて終わりの情報共有ではなく、止めるところまでを約束した連携である。

そもそも設計者のセシル🇬🇧は、TNIは事実確認をしないと明言していた。真偽を確かめない「偽情報の共有」で、いったい何を共有していたのか。「判断は各社」という言い分も、メタのザッカーバーグ自身が政権の圧力で削除基準を変えたと認めている以上、そのままは受け取れない。
2025年7月11日、この私訴に🇺🇸米司法省の反トラスト局が割って入った。訴訟の当事者としてではなく、合衆国の利益を述べる意見書を裁判所に出す形である。22頁の意見書が求めたのは一点だった。見解の競争を抑えても独禁法上の損害にはならない、という被告の前提を退けてほしい、というものだ。
意見書の論理は明快である。シャーマン法が守るのは価格の競争だけではなく、情報の質をめぐる競争も含む。報道機関だからといって、独禁法の適用を免れることはない。
その先例として意見書が挙げたのが、1945年の連邦最高裁判決だ。この事件では、AP通信が会則を使って、会員でない新聞にニュースを配らないようにしていた。最高裁は、報道の自由を理由にした適用除外を認めなかった。
意見書はまた、業界の申し合わせがすべて違法なわけではないとも書いている。たとえば🔌コンセントの形のような規格を業界で揃えることは、多くの場合かえって競争を促す。しかし、規格づくりから競争相手を締め出し、規格を排除の道具に使えば話は別だ。
何を「偽情報🚨」と呼ぶかを会員だけで決め、会員でない媒体をプラットフォーム上で目に触れにくくするなら、それはもはやコンセントの規格と同じ扱いはできない。
反トラスト局の意見書は、TNIを違法と認定したものではない。被告が訴訟の入口で閉めようとした扉を、閉めさせなかったのである。「見解の問題は独禁法の外にある」という被告の前提が通っていれば、🇬🇧TNIの中身は一度も調べられないまま、訴えは門前払いで終わっていた。
訴訟は今も、被告が訴えの却下を求めている段階にある。2026年7月、担当判事⚖️は、30日以内に却下の是非を判断するか口頭弁論を開くと示したが、9月時点で判断は公表されていない。
却下を免れれば、裁判は証拠開示の手続きに進む。そうなれば、🇬🇧英国で開示が認められなかった協定や「行動への期待」の文書、会員間でやり取りされた警報が、🇺🇸米国の法廷で開示を求められる対象になる。
🇬🇧英国で封じられた扉を、🇺🇸米国の法廷がこじ開けられるかどうか。🇬🇧TNIの実態を外から見る道は、今のところこれだけである。
TNIの代わりに、報道機関が訴えられる🇺🇸
🇬🇧TNIを直接罰するのは難しい。法人としての実体も決裁者も持たず、2023年3月を最後に公開の会合も開いていないためだ。訴状でTNIを名指ししても、被告の席に座らせられるのは会員の報道機関4社✒️だった。
第2次トランプ政権🇺🇸は、就任初日から周辺を崩しにかかった。2025年1月20日の大統領令は、連邦政府の職員と資金を使って、憲法で守られた国民の言論を制限することを禁じた。あわせて、過去4年間に政府が行った検閲を司法長官に調べさせている。同年4月には、国務省で対外偽情報への対策を担っていた部署が閉鎖された。
政府がプラットフォーム企業に削除を求める道は、政権の側から断たれたことになる。
では、民間同士の連携である🇬🇧TNIにはどう向かったのか。司法省は意見書で訴訟の扉を開けた。そしてトランプ自身は、TNIを招集した🇬🇧BBCや、同じ主流報道の側に席を占めてきた放送局📺と新聞社✒️を、番組や記事の単位で一社ずつ訴えていった。
成立した和解は二件ある。
一件目は2024年12月のABC📺である。看板司会者の発言をめぐる名誉毀損訴訟で和解し、トランプの大統領図書館に1,500万ドルを払った。司会者は番組の中で、トランプが「レイプの責任を認定された」と繰り返していた。
しかし、コラムニストが起こした民事裁判の陪審は、ニューヨーク州法でいうレイプを認めていない。トランプはその評決自体も不服として上訴してきた。ABCは公判を避け、トランプの大統領就任の前に和解に応じている。
二件目は2025年7月のCBSである。親会社のパラマウントが、看板番組『60ミニッツ』で民主党の大統領候補に行ったインタビューをめぐる訴えで、1,600万ドルの支払いに応じた。同じ質問への要領を得ない長い回答を、本編では別の簡潔な一文に差し替えた切り取り編集が問われていた。
係属中の訴訟も並んでいる。
CNN:2020年選挙をめぐるトランプの主張を「大きな嘘」と呼んだことを名誉毀損として訴えられた。一審と控訴審で退けられたが、トランプは連邦最高裁まで争いを持ち込んでいる。
ウォール・ストリート・ジャーナル:性犯罪で知られる富豪エプスタインの誕生日の記念帳に、トランプの署名入りの手紙があったとする記事で訴えられている。
ニューヨーク・タイムズ:トランプが父の財産を食いつぶして成功者を演じた、と描いた記者の著書と関連記事で訴えられている。
🇬🇧BBC:前述の通り、最大100億ドルの請求が係争中である。
これらの訴えの理由は、いずれも特定の番組のつなぎ方や記事の一文であり、TNIへの加盟ではない。
CNNはTNIの会員ですらない。それでも、訴えられた顔ぶれは、2019年以降に何が「信頼できる報道」かを定める側に座ってきた大手報道と重なる。被告にできないTNIの代わりに、TNIを招集した🇬🇧BBCや、同じ主流報道の側に座ってきた社の一つ一つに、請求書が届いている。
2026年9月、攻勢はホワイトハウスの入口にまで及んだ。18日、トランプは自らのSNSで、CNN、ポリティコ、MS NOWをホワイトハウスから締め出すと宣言した。理由に挙げたのは、この3社が「フェイクニュース」を流し続けていることである。
翌19日の朝、3社の記者はホワイトハウス敷地の通用口で止められ、通行証を無効にされたうえで回収された。
3社は、政府の妨げを受けずに報じる権利への攻撃だと反発した。ホワイトハウス特派員協会も、憲法が禁じる報道の規制だとする声明を出している。しかし、報道の自由を掲げるこの業界✒️は、他者の言説を読者の目から遠ざける警報👁️の基準を、その同じ報道の自由を盾に封印してきた。🇬🇧BBCが協定の開示を拒んだ根拠も、報道目的の情報は開示しないという特例だった。自分たちが入口で止められたときだけ憲法を持ち出すのは、虫が良すぎる。
🇬🇧TNIの警報🚨は読者の目に触れないところで回り、その先でプラットフォーム企業が、検索結果やタイムラインでの順位を下げ、ときには削除してきた。その扱いを受ける側に置かれたのは、警報を出す席を持たない会員外の媒体と個人である。

独禁法訴訟の原告となった独立系のサイト運営者や記者たちは、その結果、読者と広告収入を失ったと訴えている。
いま、TNIを招集した🇬🇧BBCや同じ主流報道の側に立ってきた社が、訴状と通行証の没収という目に見える形で押し返されている。法人としての実体を持たないTNI👻は、看板を掲げた報道機関を通じてしか、責任を問われないのである。
止まったのかどうかもわからない仕組み👁️
🇬🇧TNIの公式サイトは、2023年3月にロンドンとデリーで開いた会議を「直近の会議」と記したまま止まっている。著作権の表示は2023年のままで、会員名簿には今も「ツイッター」の名が載っている。解散の発表はなく、活動を終えたという説明もない。

止まって見えるのは、外から見える部分だけである。🚨警報そのものは、最初から非公開で回っていた。
🇬🇧英国では協定や会員間のメールの開示が認められず、💰金の流れもたどれない。TNI自体に公開の決算はなく、🇬🇧BBCが議会に出した2024年度と2025年度の年次報告にも、その名は一度も出てこない。追えるのは、周辺の団体に流れる金だけである。
そのため、TNIの警報🚨が今日も鳴っているのか、とうに止まったのかを、外から確かめる手段はない。知っているのは、会員だけである。
それでも、TNIの名が公の手続きの中で今も使われている場所がある。🇺🇸米国の連邦地裁の記録である。訴状はTNIを軸に組み立てられ、司法省の意見書も、BBCやワシントン・ポストがグーグルやメタと組んだ業界連携として、「トラステッド・ニュース・イニシアティブ」の名を明記している。

招集者の🇬🇧BBCが自らの年次報告に書いていない名を、いま公の記録に書き残しているのは、訴えた側と米国の司法省である。
中身を開けられる可能性があるのは、この法廷だけだ。ただし、訴えから3年がたっても、却下するかどうかの判断すら出ていない。
その間にも、🇺🇸トランプ陣営は手を止めていない。
出禁から3日後の9月21日、CNNなど3社が連邦地裁に提訴し、主要テレビ局の代表取材もCNNの代わりを立てずに止まったが、その夜、ホワイトハウスは公式YouTubeチャンネルで24時間の配信「TRUMP TV」を始めた。
トランプ🇺🇸を映さなくなった主流報道の映像に頼らず、政権の映像を視聴者の画面へ直接届ける手である。
配信の場になったYouTubeは🇬🇧TNIの名簿に載るグーグルの傘下にあり、前年の9月にはトランプのアカウント停止をめぐる訴訟で、2,450万ドルを払って和解している。報道からの警報を受け取る席に座ってきた企業の画面の上で、いまは政権の配信が24時間流れているわけだ。
一方で、何が「信頼できる報道」かを先に決める発想は、別の場所にも現れている。
写真や動画に発信元の電子署名を付ける技術規格が広がるのに合わせて、国際的な報道技術の標準化団体が「検証済みの出版社」の一覧を作った。危険な言説に先回りして警報を出す代わりに、正規の発信者の側に先に印を付ける仕組みである。
🇬🇧英国政府は2026年6月、SNSや動画サイトに、公共放送のニュースを目立つ位置に置かせる検討を始めた。
どの場所にも、同じ顔がある。検証済みの出版社の一覧に最初から名を連ねたのは🇬🇧BBCであり、英国政府が目立つ位置に置かせようとしている公共放送の筆頭もBBCだ。日本で「参照点」を掲げたのは、TNIに加わったNHKである。
民間の申し合わせであれば、独禁法で争う道がある。司法省の意見書が開けたのは、まさにその道だった。しかし、同じ発想が国の法律になれば、申し合わせとして争うことはできない。
英国の検討はまだ法律になっていないが、その方向へ動き始めている。
誰が、何を基準に、どの言説を「危険」と決めてきたのか。冒頭で投げたこの疑問への答えは、2019年から一度も公開されていない。
公開の会合を止めても、名簿を更新しなくても、何が信頼できる報道かを先に決めようとする者たちは、次の扉🔏を用意している。
🇺🇸米国の法廷で🇬🇧TNIの扉🔏がこじ開けられようとしているあいだに、彼らはもう、国の法律という別の扉を作り始めている。独禁法では開けられない扉である。
認知🧠の戦場で本当に手強いのは、声高な宣伝ではない。一つの扉🔏が叩かれるころには、もう次の扉ができている。
参考文献
BBC Media Centre (2019/07/11) Tony Hall’s Speech at the Global Conference for Media Freedom
当時のBBC会長トニー・ホールが、英国外務省主催の報道の自由をテーマとする国際会議で行った演説の記録。前月にBBC本部で非公開の「信頼できるニュースのサミット」を開いたことを自ら明かし、BBCの招集力でニュースの誠実さを守る世界同盟を作ると宣言している。報道の自由を語る場で、扉を閉ざした会合の成果を誇った発言の一次資料。
BBC Media Centre (2019/09/07) New Collaboration Steps Up Fight Against Disinformation
BBCがTNIの発足を正式に発表した文書。発足理由として同年春のインド総選挙などで目立ったSNS上の偽情報を挙げ、最初に合意した作業を、生命や選挙を脅かす偽情報の早期警戒、メディア教育、投票情報の共有の三つとしている。グーグル、フェイスブック、ツイッター、マイクロソフトと大手報道機関が並んだ、TNIの出発点を示す資料。
BBC About Us: Trusted News Initiative
TNIの公式の自己定義と会員名簿を掲げたBBCの紹介ページ。「生命や民主主義の健全性を脅かす有害な偽情報をリアルタイムで止める世界的パートナーシップ」という定義と、会員が互いに知らせ、プラットフォームが速やかに審査し、報道側は再配信しないという三つの動作が書かれている。会員は23の組織で、著作権表示は2023年のまま、社名変更後も「Twitter」の表記が残っている。
BBC Trusted News Initiative
TNIの入口となるBBCの紹介ページ。直近の会議を2023年3月にロンドンとデリーで開いた「Trust in News」と記したまま更新が止まっており、それ以降の年次会議の記載はない。解散の発表も活動終了の説明もないまま、活動の公開だけが途絶えている現状を示す。
BBC Media Centre (2020/07/13) Trusted News Initiative Steps Up Global Fight Against Disinformation with New Focus on US Presidential Election
米大統領選に向けてTNIの警戒を強めると発表したBBCの文書。AP通信とワシントン・ポストの新規参加を伝え、警報の対象を生命への脅威、選挙の健全性を損なう偽情報、会員ブランドのなりすましとしている。2019年の英総選挙、2020年の台湾総選挙、偽のジョンソン首相死亡説などを成功例として自己評価しているが、個別の警報の明細は示していない。
BBC Media Centre (2020/12/10) Trusted News Initiative to Combat Spread of Harmful Vaccine Disinformation and Announces Major Research Project
ホールの後任としてBBC会長に就いたティム・デイビーが主催した会合で、TNIの焦点をワクチンをめぐる情報へ移したと発表した文書。発足時のなりすまし対策から、専門家のあいだでも見解が割れていた医学の論点へと、警報の対象が広がった日付をBBC自身の発表で裏付けている。
CBC/Radio-Canada (2022/11/09) Trusted News Initiative Creates Asia-Pacific Network
TNIがアジア太平洋地域の連絡網を設け、日本のNHKやオーストラリア、インド、パキスタン、インドネシアの報道機関が新たに加わったことを伝えるカナダの公共放送の発表。新規参加社の記者研修の資金がグーグルの報道支援プログラムから出ていることを明記しており、TNIの拡大を支えた金の流れを示す一次資料。
https://cbc.radio-canada.ca/en/media-centre/trusted-news-initiative-in-asia
EBU (2020/03) Trusted News Initiative Announces Plans to Tackle Harmful Coronavirus Disinformation
欧州各国の公共放送が加盟する欧州放送連合が、TNIの対象を新型コロナウイルス関連の有害情報に広げると伝えた発表。重大な警報を、連合のニュース配信の仕組みを通じて加盟する公共放送へ再配信すると自ら書いている。TNIがBBC一社の企画ではなく、欧州の公共放送網をまるごと国際的な連絡網につないだ連携だったことを示す。
Chatham House Jessica Cecil
英国王立国際問題研究所、通称チャタムハウスが公開しているジェシカ・セシルの略歴。セシルを評議員として紹介し、TNIの創設者でディレクターという肩書をそのまま併記している。TNIを設計したBBC内部者が、のちに英国の外交シンクタンクの統治機構に入ったことを示す一次資料。
https://www.chathamhouse.org/about-us/our-people/jessica-cecil
Chatham House Corporate Members
チャタムハウスに会費を払う法人会員の名簿。最上位の会員に英国外務省と国防省が並び、その下の階層にBBC本体と金融街を治める自治体シティ・オブ・ロンドン、さらに下にイングランド銀行が入っている。チャタムハウス自体はTNIの会員ではないが、TNIを招集した公共放送と英国の外交、防衛、金融街が、ロンドンの同じ会費名簿に載っていることを示している。
https://www.chathamhouse.org/become-member/corporate-membership/corporate-members
Reuters Institute Jessica Cecil
オックスフォード大学のロイター・ジャーナリズム研究所が公開するセシルの略歴。BBCで4代の会長の首席補佐官を務め、TNIを立ち上げた経歴に加え、チャタムハウスの教育部門のフェロー、米系シンクタンクであるランド研究所の欧州部門の顧問を兼ねていることを記している。偽情報対策の実務と英米の政策研究の場が、一人の人物を通じてつながっていることを示す資料。
Ditchley Foundation Ms Jessica Cecil
英米の非公開会議を主催するディッチリー財団が公開するセシルの紹介ページ。セシルを財団のフェローとして紹介し、BBC在職中にTNIを交渉して主導したと財団側が明記している。セシルがTNIの設計者であることを、BBC以外の組織の記述で裏付ける資料。

Paris Peace Forum (2020/11) Jessica Cecil on the Trusted News Initiative
2020年のパリ平和フォーラムでセシルがTNIの運用を説明した映像。TNIは事実確認をしないと明言し、「ガラスを割る」ような非常時に、分単位、時間単位で会員が互いに知らせるための連絡網だと語っている。真偽の判断は各社の編集に任せ、TNIは流通の順番だけを扱うという運用の核心を、設計者本人の言葉で示す一次資料。
Information Commissioner’s Office (2022/08/25) Decision Notice IC-185687-C4J8
英国の情報公開を監督する情報コミッショナーが出した決定通知。TNI会員との協定、会員に求める「行動への期待」を記した文書、関連するメールの開示請求について、報道目的で保有する情報を情報公開法の対象外とするBBCの特例を根拠に、BBCの拒否を認めた。TNIの中身が制度として外から確かめられなくなった経緯を示す。
https://ico.org.uk/media2/migrated/decision-notices/4021536/ic-185687-c4j8.pdf
Full Fact (2020/04) Boris Johnson Has Not Died of Coronavirus
新型コロナウイルスで入院中のジョンソン首相が死亡したと偽のBBCアカウントが流した件について、英国の検証団体が同日中に否定した記事。偽アカウントの名称が本物と一字違いで、認証も付いていなかったことを確認している。BBCがTNIの成功例として繰り返し挙げる一件の記事。

CNBC-TV18 (2020/04) Pakistani TV Channel Broadcasts Fake News of UK PM Boris Johnson’s Death
パキスタンのテレビ局が、偽のBBCアカウントを出典にジョンソン首相の死亡を放送したことを伝えるインドの経済ニュースの記事。偽投稿がツイッターで削除され、検証団体が否定した後も、国際テレビで一度は放送されていた事実を記録している。TNIの成功例が、実際には完全に止められていなかったことを示す資料。

Belfer Center (2020) Combatting and Defeating Chinese Propaganda and Disinformation: A Case Study of Taiwan’s 2020 Elections
ハーバード大学の研究所が、2020年の台湾総選挙における偽情報対策をまとめた事例研究。対策を担ったのは台湾の選挙管理当局、台湾の検証団体、市民団体、そしてフェイスブックやLINEによる削除だったと整理しており、TNIの名は出てこない。TNIが成功例に挙げる台湾選挙で、実際に誰が動いていたのかを確かめるために使った。

U.S. District Court N.D. Texas (2021/09/28) Transcript of Jessica Cecil Remarks
別件の訴訟で証拠として提出された、2021年9月のセシルの発言の文字起こし。2020年の米大統領選とミャンマーの選挙で、会員が「最も重大な偽情報」について警報を共有したと事後に語っている。ただし、どの言説をいつ止めたのかは一件も示しておらず、成功の明細が出てこないことを示す資料として使った。
https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.txnd.371829/gov.uscourts.txnd.371829.55.1.pdf
European Commission (2018/09/26) 2018 Code of Practice on Disinformation
欧州委員会が示した偽情報対策の行動規範。グーグル、フェイスブック、ツイッターが署名し、マイクロソフトは翌年に加わった。罰則のない任意の自主規制で、罰金を伴う欧州の法律には抵抗した米国の巨大IT企業が、任意の枠組みには参加していたことを示している。TNIへの参加と同じ選び方を裏付ける資料。
Google (2018/03/20) Announcing the Google News Initiative
グーグルが報道支援の包括プログラムを立ち上げ、3年で3億ドルを投じると発表した公式ブログ。記者研修、報道機関への助成、偽情報対策の研究などを柱とする。このプログラムがのちにTNIのアジア太平洋網の記者研修を払い、会員の研究機関の調査を支えることになる、金の流れの起点を示す。

Reuters Institute : Google News Initiative, YouTube and Oxford University Agree Extension to 2026
TNI会員でもあるロイター・ジャーナリズム研究所が、毎年公表する世界のニュース調査について、グーグルの報道支援プログラムとYouTubeが主たる資金提供者として2026年まで支援を延長すると発表した文書。何が信頼できる報道かを論じる研究の費用が、表示の順番を決めるプラットフォーム企業の側から出ていることを示す資料。
PBS NewsHour/AP (2024/08/27) Zuckerberg Says the White House Pressured Facebook to “Censor” Some COVID-19 Content During the Pandemic
メタの最高経営責任者ザッカーバーグが米下院司法委員長に送った2024年8月26日付の書簡を伝える通信社の記事。2021年にバイデン政権の高官が風刺を含む新型コロナ関連の投稿の削除を数か月求めたこと、政府の圧力は誤りだったという本人の評価、ノートパソコンの記事の表示を落とすべきではなかったという反省、そしてホワイトハウスの反論を確認できる。

Social Media Today (2024/08/26) Zuckerberg Raises Questions Over Government Suppression Requests
ザッカーバーグの書簡の該当部分を原文で引用した記事。削除の最終判断は自社にあったとしたうえで、政権の圧力を受けて新型コロナ関連の削除基準を実際に変え、その判断を自社のものとして引き受けると書いた一文を確認できる。プラットフォームの「判断は各社」という説明の中身を、ザッカーバーグ本人の言葉で。
Meta (2025/01/07) More Speech and Fewer Mistakes
メタが第三者のファクトチェック団体との契約を打ち切ると発表した公式文書。打ち切りの対象は米国内に限られており、米国の外では契約が続いている。トランプの大統領就任の13日前に米国では手を引き、日本を含むそれ以外の国では同じ仕組みを回し続けたという、メタの二面性を示す一次資料。
https://about.fb.com/news/2025/01/meta-more-speech-fewer-mistakes/
Ministry of Internal Affairs and Communications (2023) NHK’s Initiatives Against Disinformation and Misinformation
NHKが総務省の検討会に提出した偽情報対策の資料。日本のメディアとして最初にTNIに参加したこと、2023年3月の年次会議に出席し、生成AI、メディアの信頼性、選挙への対応を話し合ったことを自ら書いている。日本からTNIに加わったのがNHKだけであることを、当事者の文書で確認できる資料。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000884978.pdf
NHK Science & Technology Research Laboratories (2023/05/24) NHK STRL Joins C2PA
NHKの技術研究所が、写真や動画に発信元の電子署名を付ける技術規格の団体に加わったと発表した文書。直前の経緯としてTNIへの加盟を挙げ、知識の共有だけでなく技術標準の開発にも参加すると書いている。TNI加盟後のNHKが、何を「正規の発信」とみなすかを決める技術の側にも進んだことを示す資料。
https://www.nhk.or.jp/strl/english/news/2023/3.html
AV Watch (2024/01/09) NHK Announces Content-Driven Management Plan
NHKが2024年度からの3か年の経営計画を公表したことを伝える記事。計画の軸に「情報空間の参照点」の提供を据え、真偽の定まらない情報が飛び交う中で、何を基準の位置に置くかを公共放送が先に示すと宣言している。TNI会員のNHKが、国内で「信頼」の基準点を担う姿勢を打ち出したことを示す資料。

Impress Watch (2023/08/17) YouTube Begins Removing Harmful Medical Misinformation Videos
TNI会員であるグーグル傘下のYouTubeが、医療情報に関する削除方針を整理したことを伝える記事。予防、治療、ワクチンの安全性や成分などについて、各国の保健当局や世界保健機関の指針と食い違う内容を削除するとしている。この基準は日本の新聞社や民放の公式チャンネルにも、個人の発信者にも同じように適用される。
https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1524164.html
K-tai Watch (2021/08/06) Yahoo Japan Outlines Measures Against COVID-19 Vaccine Misinformation
TNIに加盟していないヤフーが発表した、新型コロナワクチンに関する誤情報への対策を伝える記事。ニュースのトピックス欄で「デマ」を否定する記事を積極的に掲出し、「ワクチン 危険性」と検索すると厚生労働省のサイトや専門家の解説が上位に出るようにした。記事の並び順を決めるのが、記事を書いた新聞社ではないことを示す資料。
Japan Fact-check Center : JFC Funding and Accounts
日本ファクトチェックセンターが自ら公開している支援と会計のページ。設立時にグーグルから150万ドル、当時のヤフーから2,000万円の助成を受け、その後LINEヤフーとメタも資金を出していることを記している。2025年度の収入約2,617万円のうち約2,167万円がプラットフォーム企業などからの助成で、判定を付ける団体の財布を並び順を決める企業が支えている構図を示す一次資料。

Ministry of Internal Affairs and Communications:Response to Illegal and Harmful Information on the Internet
総務省が公開している情報流通プラットフォーム対処法の案内ページ。2025年4月に施行されたこの法律が、総務省の指定した大規模なプラットフォーム企業に、削除の申し出への迅速な判断と削除対応の実績の公表を義務づけていることを確認できる。対象の中心は誹謗中傷などの権利侵害で、偽情報そのものを定義した法律ではない。
Web Tantou Forum (2026/07/27) MIC Issues First Recommendations Under Platform Act to Five Companies
総務省が2026年7月24日、情報流通プラットフォーム対処法に基づく初の勧告を、グーグル、X、メタなど5社に出したことを伝える記事。勧告の理由は、削除対応の実績を定められた通りに公表していなかったこと。日本政府がプラットフォーム企業に削除の件数の公表を迫る一方で、TNIの警報は一件も公表されていないという対比の根拠。
https://webtan.impress.co.jp/n/2026/07/27/53034
The Telegraph (2025/11/06) Read the Devastating Internal BBC Memo in Full
BBCの編集基準委員会で外部顧問を務めた人物が理事会に提出した19頁の報告書の全文を公開した英紙の記事。『パノラマ』がトランプの2021年1月6日の演説を、50分以上離れた箇所をつないで一続きの発言に見せた編集のほか、ガザをめぐるBBCアラビア語放送の偏りなども取り上げている。BBCの会長辞任につながった一連の事態の出発点となった報道。
https://www.telegraph.co.uk/news/2025/11/06/read-devastating-internal-bbc-memo-in-full/
Yahoo News/PA (2025/11/09) Donald Trump’s Press Secretary Celebrates After Tim Davie Resigns as BBC Director-General
BBC会長デイビーの辞任当日に、当時のホワイトハウス報道官キャロライン・レビットがSNSで「ショット」「チェイサー」と添えて二つの記事を並べた投稿を伝える英国の通信社の記事。レビットがテレグラフ紙の取材に、BBCを「完全に、100パーセントのフェイクニュース」と語った発言も原文で確認できる。
BBC News (2025/11/09) Tim Davie and Deborah Turness Resign
BBC会長ティム・デイビーと、報道部門の最高責任者デボラ・ターネスの辞任を伝えるBBC自身の記事。『パノラマ』の編集問題をめぐる批判が高まる中での辞任で、デイビーは2020年12月にTNIの会合を主催し、警報の対象をワクチンに移した人物でもある。TNIの招集者のトップが、自社の番組の問題で退いた事実を示す資料。

BBC News (2025/11/10) BBC Chair Apologises for Panorama Trump Speech Edit
BBC理事長サミール・シャーが英下院の委員会に送った手紙を伝える記事。編集が暴力行為を直接呼びかけたという印象を与えたと認め、「判断の誤り」を謝罪している。編集基準委員会がこの編集を2025年1月と5月に議論しながら、正式な措置を取らなかったことも理事長自身が説明している。

Express & Star/PA (2025/11/10) BBC “Apologises for Error of Judgment” Over Trump Speech Edit
シャー理事長の手紙の内容を詳しく伝える英国の通信社配信の記事。問題の編集が、編集基準委員会が自ら発注したBBCの米大統領選報道の検証の中ですでに取り上げられ、番組の制作陣にも伝えられていたという経緯を確認できる。BBCが誤りに気づいていながら、報告書が外に漏れるまで直さなかったことの根拠として使った。

BBC News (2025/11) BBC Apologises to Trump but Rejects Defamation Claim
BBCが番組のページに訂正文を載せ、編集が意図せず一続きの演説のように見せたと認めて、トランプ本人に謝罪したことを伝える記事。番組を二度と放送しないとし、理事長がホワイトハウスに私信を送った一方で、名誉毀損の根拠があることには強く反対し、補償は拒んだ。謝罪と補償拒否を同時に行ったBBCの立場を示す資料。
https://www.bbc.com/news/articles/c4gw001kw97o
BBC News (2026/07/17) Donald Trump Drops BBC Studios from Panorama Lawsuit, but Main Case Remains
トランプがフロリダ州の連邦地裁で起こした最大100億ドルの訴訟の経過を伝えるBBC自身の記事。名誉毀損とフロリダ州の不公正取引を禁じる法律に基づく請求のうち、BBC本体への請求は続いており、公判は2027年2月に予定されていることを確認できる。
https://www.bbc.co.uk/news/articles/cly5wyynv9zo
Kumamoto Nichinichi Shimbun/Kyodo (2026/08/28) US Press Secretary Leavitt Steps Down, Successor Undecided
キャロライン・レビットが2026年8月27日付でホワイトハウス報道官を退任したことを伝える共同通信配信の記事。BBCの報告書が公開された2025年11月時点では報道官だったため、本文では「当時の」報道官と表記した。2026年9月のホワイトハウス出禁が、レビット退任後にトランプ本人の発信で行われたことを確認する根拠。
https://kumanichi.com/articles/2029782
CourtListener (2023〜) Children’s Health Defense v. W.P. Company LLC, No. 1:23-cv-02735
ケネディが創設した健康団体チルドレンズ・ヘルス・ディフェンスと独立系のサイト運営者らが、ワシントン・ポスト、BBC、AP通信、ロイターを米国の独占禁止法違反で訴えた裁判の記録。首都ワシントンの連邦地裁で係属しており、被告が求める訴えの却下について、2026年9月時点で判断が公表されていないことを確認できる。
https://www.courtlistener.com/docket/67812794/childrens-health-defense-v-w-p-co-llc
U.S. Department of Justice (2025/07/11) Justice Department Files Statement of Interest on Suppression of Competition in the Marketplace of Ideas Through Deplatforming of Rival Viewpoints
米司法省が、チルドレンズ・ヘルス・ディフェンスの独禁法訴訟に意見書を提出したと発表した文書。反トラスト局の長官が、市場支配力を使って独立した声を締め出し、既存のメディアを守ることは競争を害すると語っている。私訴に政権が法解釈で割って入ったことを示す一次資料。
https://www.justice.gov/opa/pr/justice-department-files-statement-interest-suppression-competition-marketplace-ideas
U.S. Department of Justice (2025/07/11) Statement of Interest of the United States
司法省反トラスト局が裁判所に提出した22頁の意見書。訴状を引用してTNIの名を明記し、標的にされた主張として新型コロナウイルスの人工説や、感染によって得た免疫の有効性などを挙げている。被告が「何を誤情報と数えるかを共同で決めた」にすぎないと主張していることも引用したうえで、1945年のAP通信事件を先例に、報道機関にも独禁法が及ぶと論じている。
https://www.justice.gov/opa/media/1407661/dl
The White House (2025/01/20) Restoring Freedom of Speech and Ending Federal Censorship
第2次トランプ政権の就任初日に出された大統領令。連邦政府の職員と資金を使って、憲法で守られた国民の言論を制限することを禁じ、過去4年間に政府が行った検閲を司法長官に調べさせている。政府がプラットフォーム企業に削除を求める道を、政権の側から断った出発点となる一次資料。

Reuters (2025/04/16) US State Department Closing Office Aimed at Countering Foreign Disinformation
米国務省が、対外偽情報への対策を担っていた部署を閉鎖すると伝える通信社の記事。前身の組織から続いてきた、政府による偽情報対策の枠組みを第2次トランプ政権が畳んだことを示している。TNIを直接規制する代わりに、政権がその周辺にある政府の枠組みから崩していった動きの一つ。
CNN Business (2024/12/16) Why ABC News Settled with Donald Trump for $15 Million
ABCの看板司会者が番組で、トランプが「レイプの責任を認定された」と繰り返した発言をめぐる名誉毀損訴訟で、ABCが和解し大統領図書館に1,500万ドルを払ったことを伝える記事。民事裁判の陪審はニューヨーク州法でいうレイプを認めておらず、ABCはトランプの大統領就任前に公判を避けて和解に応じている。

AP News (2025/07/02) Paramount Settles with Trump for $16 Million over “60 Minutes” Interview
CBSの親会社パラマウントが、看板番組『60ミニッツ』で民主党の大統領候補に行ったインタビューの編集をめぐる訴えで、1,600万ドルを払って和解したことを伝える通信社の記事。謝罪はせず、当時パラマウントが進めていた合併の審査の時期と和解が重なっていたことも記している。
https://apnews.com/article/trump-media-harris-minutes-paramount-6415042fe910ae60b432dd8c73ef61b2
The National News Desk:Trump Calls His Lawsuit Against “60 Minutes” a “True WINNER”
『60ミニッツ』の編集問題の中身を伝える記事。イスラエル政策をめぐる同じ質問への回答について、前日にCBSの別番組で流れた予告では長い回答が、本編では別の簡潔な一文が使われていた経緯を確認できる。CBS自身も、本編で使ったのは「より簡潔な部分」だったと説明している。
https://wjla.com/news/nation-world/trump-calls-lawsuit-against-60-minutes-a-true-winner
Politico (2026/03/04) Trump Is Still Going After the Press in Court. Here’s Where His Lawsuits Stand
トランプが報道機関を相手取って起こしている訴訟の状況を一覧にした記事。CNN、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、BBCなどへの訴えと、ABCやCBSとの和解が並んでいる。TNIを招集したBBCや、同じ主流報道の側に座ってきた社が、番組や記事の単位で一社ずつ訴えられている全体像を示す。
https://www.politico.com/news/2026/03/04/donald-trump-media-lawsuits-00812525
The New York Times (2026/09/19) CNN, MS NOW and Politico Barred From White House After Trump’s Ban
トランプがCNN、ポリティコ、MS NOWをホワイトハウスから締め出すと宣言した翌朝、3社の記者が敷地の通用口で止められ、通行証を無効にされて回収されたことを伝える記事。締め出しの理由としてトランプが挙げたのはTNIではなく、「フェイクニュース」を流し続けていることだった。
https://www.nytimes.com/2026/09/19/business/media/trump-white-house-press-ban.html
GOV.UK (2026/07/14) BBC Group Annual Report and Accounts for 2025 to 2026
英国議会に提出されたBBCの2025/26年度の年次報告。本文とリスクの記述のいずれにもTNIの名は出てこず、ヒットするのは「信頼できるニュースの提供者」といった一般的な言い回しだけ。TNIに公開の決算がないことと合わせて、金の流れからもTNIの活動を確かめられないことの根拠。

Newsweek (2026/09/21) White House Launches Trump TV Amid Media Ban: What We Know
ホワイトハウスが2026年9月21日午後7時、公式YouTubeチャンネルで24時間の配信「TRUMP TV: The Essentials Station」を始めたことを伝える記事。同じ日にCNN、MS NOW、ポリティコの3社が締め出しをめぐって連邦地裁に提訴し、ABC、CBS、CNN、Fox、NBCが持ち回りで担うテレビの代表取材が、CNNの代わりを立てずに停止したことも確認できる。締め出した報道に頼らず、政権の映像を直接届ける手に出た経緯を示す。

PBS NewsHour/AP (2025/09/30) YouTube to Pay $24.5 Million to Settle Lawsuit over Trump’s Account Suspension after Jan. 6 Attack
グーグル傘下のYouTubeが、2021年のトランプのアカウント停止をめぐる訴訟で2,450万ドルを払って和解したことを伝える通信社の記事。うち2,200万ドルはナショナル・モール信託を通じてホワイトハウスの宴会場建設に充てられ、和解は責任の承認にあたらないと記されている。TNIの名簿に載る企業が、前年にトランプとの訴訟を金銭で決着させていた。
https://www.pbs.org/newshour/nation/youtube-to-pay-24-5-million-to-settle-lawsuit-over-trumps-account-suspension-after-jan-6-attack
IPTC:Verified News Publishers List
国際的な報道技術の標準化団体が作った「検証済みの出版社」の一覧。写真や動画に発信元の電子署名を付ける技術規格の広がりに合わせて、どの報道機関を正規の発信者とみなすかを示しており、BBCが最初から名を連ねている。危険な言説に警報を出す代わりに、正規の発信者の側に先に印を付ける発想を示す。
https://www.iptc.org/verified-news-publishers-list/
GOV.UK (2026/06/23) Plans for Prominence of Trusted News Sources on Social Media Alongside Measures to Reform Public Service Media in the UK
英国政府が、SNSや動画サイトに公共放送のニュースを目立つ位置に置かせる検討を始めたと発表した文書。業界の任意の申し合わせだったものが、国の政策として求める方向へ動き始めたことを示している。何が信頼できる報道かを先に決める発想が、独禁法で争える民間の協定から、国の側へ移りつつあることの根拠。
https://www.gov.uk/government/news/plans-for-prominence-of-trusted-news-sources-on-social-media-alongside-measures-to-reform-public-service-media-in-the-uk






