緊急使用許可への工作
2020年3月27日、🇺🇸HHSは、安全・有効性の正式承認を受けていない医薬品・生物製剤についても緊急使用を正当化する宣言を出した。
これにより、新型コロナウイルス対応のワクチンや治療薬に対する緊急使用許可(EUA)には、はっきりした法的要件が定められた。
「承認済みの代替治療が存在しないこと」
この一文が、2020年の動きを強く規定した。
トランプ大統領が新型コロナウイルス感染症治療薬としてヒドロキシクロロキンを推奨した直後、FDAは同薬の使用に慎重な姿勢を示した。4月24日には、院外や臨床試験外での使用について、深刻な心臓の障害のリスクを指摘する公式警告を発した。
その後、2020年5月22日にランセット誌に掲載された論文は、ヒドロキシクロロキンが有害だと結論づけた。WHOはこの論文が示した安全性への懸念を理由に、既存治療薬臨床試験からヒドロキシクロロキン使用グループを一時的に外す。
だがこの論文は6月5日、データの提供元が真正性を保証できなくなったとして撤回された。それでも6月17日、WHOは同グループの試験を正式に中止した。その根拠として示されたのは、撤回された論文ではなく、臨床試験そのものが蓄積したデータだった。
既存の薬が「承認済みの代替」として残り続ければ、緊急使用許可の前提は崩れる。だからこそ、ヒドロキシクロロキンやイベルメクチンに対する否定的な発信が集中した。
一方で、死亡率の数字を高く見せる動きも並行して進んだ。
🇺🇸感染症対策のトップだった、ファウチ博士の私的な認識では0.2〜0.3%とされていた数字が、公の場では「季節性インフルエンザの10倍」や「3.4%」として示された。この落差は、緊急事態の雰囲気と社会的な受容を支える上で機能した。
法的要件を満たすための既存薬の排除と、緊急事態を支えるための恐怖の増幅。この二つが同時に走った結果、緊急使用許可の環境は維持され続けた。
前回見た資金と医療ネットワークの構造が、新型コロナウイルス自然発生説を守った。今回は、同じ構造が緊急使用許可という法的スイッチの周りでどう働いたかを見る。
この緊急事態を「好機」と呼んだ人々もいた。時系列を並べてみれば、誰にとっての緊急事態だったのかが浮かび上がる。
私的な0.2%、公的な10倍
ファウチの私的な認識と、公の場での発言には、はっきりした乖離があった。
2020年2月8日の業務日誌に、元CDC所長のトム・フリーデンとの電話の記録が残っている。二人は一致して、分母は公表されている34,867人より大幅に多く、症例致死率は2.0%ではなく0.2〜0.3%程度になると見積もっていた。
ファウチは「悪いインフルエンザのような伝播力だ」とも記している。
それから約1ヶ月後の3月11日。ファウチは下院監視改革委員会での証言で、公表されている死亡率は全体でおよそ3%だとしたうえで、無症状・軽症の感染者を含めれば「1%程度まで下がるだろう」と述べた。そのうえで、それでも「季節性インフルエンザの10倍致死的だ」と続けた。
私的な業務日誌では0.2〜0.3%。公の場で述べた、最も低く見積もった数字でも1%。証言そのものの中に、すでに3倍から5倍の開きがあった。
同じ3月、WHOは新型コロナウイルスの症例致死率を3.4%と発表した。検査数が限られていた初期段階の数字であり、後に血清有病率データから推定された感染死亡率の中央値は0.23%だった。だが、3.4%という数字が強く印象づけられた。
この数字の扱いだけを見て、ファウチ一人の判断だったと片付けることもできない。数字とは別の角度からも、彼が新型コロナウイルスの「物語」に関与していたことを示す文書がある。
2020年4月、ビル・ゲイツは「Pandemic I: The First Modern Pandemic」と題する原稿をファウチに送り、フィードバックを求めている。この原稿でゲイツは、新型コロナウイルスの流行を「最初の近代的なパンデミック」と位置づけ、「これは世界大戦のようなものだが、今回は全員が同じ側に立っている」と表現した。
ロックダウンの必要性を強調し、それを行わなければ数百万人規模の死者が出ると主張し、治療法・ワクチン・検査・接触追跡・再開政策の5分野で急速なイノベーションが必要だと論じた。この原稿は4月下旬に一般に公開された。
さらに2022年1月、ゲイツは別の書籍『How to Prevent the Next Pandemic』の原稿編集をファウチに依頼した。
この書籍でゲイツは、ワクチン・治療薬・診断技術をより迅速に開発・供給する体制を整えること、疾病監視システムを強化することを主な提案として挙げている。ファウチは追跡変更を加えた上で、NIAIDの同僚デイビッド・モレンズに「極秘で」回覧し、読後に破棄するよう指示していた。
パンデミックの有力な物語の原型は、政府高官と一民間人の間で秘密裏に共同編集され、その痕跡は消すよう指示されていた。誰がこの物語を書いていたのかを、はっきりと示している。
承認済みの代替薬を消す
ヒドロキシクロロキンの排除は、前章で見た通りだ。
トランプ大統領の推奨直後からFDAが慎重姿勢を示し、問題のある論文がWHOのヒドロキシクロロキンの検証実験停止の理由に使われ、最終的には撤回後の別の根拠で試験そのものが正式に中止された。
ところが、インドでは異なる判断が下されていた。
インド保健家族福祉省とICMRは2020年5月、医療従事者向けにヒドロキシクロロキンの予防投与を推奨している。米国やWHOが排除する方向に動くのと、ほぼ同じ時期に、別の国では実際に「承認済みの代替」として運用されていた。この判断の分かれ方をどう評価するかは読者に委ねるが、少なくとも「代替なし」という前提そのものが、世界共通の医学的合意ではなかったことは指摘できる。
EUAの法的要件は明確だ。「承認済みの代替治療が存在しないこと」。
ヒドロキシクロロキンが代替として残り続ければ、この要件は満たせなくなる。この薬に対する否定的な発信が集中したことは、新しいワクチンの緊急使用許可を進めたい側にとって必要不可欠な情報環境だった。
イベルメクチンについては、2020年の時点ではまだ限定的な動きにとどまっていた。
同年4月10日、FDAは動物用イベルメクチンを人間が新型コロナウイルス感染症治療で使用しないよう、医療業界向けの書簡で注意喚起している。
この時点ではまだ「イベルメクチンは新型コロナウイルス感染症に効かない」という否定ではなく、「動物用の高濃度製剤を自己判断で使うな」という限定的な警告だった、ヒトに処方されている薬であることは情報として流通しなかった。イベルメクチン自体への本格的な否定キャンペーンが展開されるのは、翌2021年に入ってからのことになる。
これら一連の動きを支えた情報管理の構造は、後に法廷で認定されることになる。2026年8月18日、モレンズは連邦裁判所でFOIAおよび連邦記録法の回避を目的とした共謀罪について有罪を認めた。
FOIAは政府システム上に存在する記録にしか及ばない。官用メールで記録が残れば開示請求の対象になる。個人Gmailに逃がせば、法的には「記録が存在しない」状態を作れると考えたのか、浅はかな行動だ。
隠された内容は三つある。
一つ目は、NIAIDがエコヘルス・アライアンスに授与し武漢ウイルス研究所へ下請けされたコウモリ由来のコロナウイルス研究の助成金関連記録だ。この助成金は、新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所から発生したとの疑惑を理由にNIHが終了させていた。
二つ目は、エコヘルス・アライアンスへの資金提供継続に影響を与えることを目的としたやり取りだ。
三つ目は、ファウチへの報告そのものだ。共犯者から得た情報を個人Gmail経由でファウチに渡すことで、ファウチが情報を受け取った事実を公式記録から消した。
さらにモレンズは、ウィルス自然起源説を擁護する科学解説記事の執筆を対価として、共犯者からワインを受け取った。パンデミックの公式記録を隠し、公式見解を書き続ける。その報酬がワイン🍷だった。
二つの出来事が必要だった
ここまで見てきたことを整理する。
🇺🇸感染症対策のトップ、ファウチの新型コロナウイルス感染症における死亡率の私的な見積もりと公の発言の間には乖離があった。0.2〜0.3%と私的に見積もっていた数字に対し、公の場で本人が最も低く見積もった数字でも1%、そして「季節性インフルエンザの10倍致死的だ」という言葉が残った。WHOが発表した3.4%という数字も、あわせて強く印象づけられた。
この落差は、緊急事態の雰囲気を維持する上で機能した。
もう一方で、ヒドロキシクロロキンという既存の薬剤に対する否定的な発信が集中した。この薬が「承認済みの代替」として残り続ければ、緊急使用許可の法的要件は満たせなくなる。
この二つは、同じ理由で起きたわけではない。代替薬の排除は、EUAの法的要件が直接求めたものだ。死亡率を高く見せることは、法が求めたものではない。ロックダウンや行動制限を人々に受け入れさせるために、別に必要とされたものだ。
理由は別々でも、時期は重なった。代替薬が消え、恐怖が維持された。この二つが同じ2020年に同時に起きたことで、緊急使用許可の環境は保たれ続けた。
それが、2020年に起きたことの骨格だ。
緊急事態を「好機」と呼んだ者たち
2019年10月18日、ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センター、世界経済フォーラム(WEF)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の共催で、Event 201と呼ばれる机上演習が行われた。
Event 201は、ニューヨークで行われた約3時間半の机上演習だ。
参加したのは、政府・企業・公衆衛生分野の幹部級の人々である。想定されたシナリオは、架空の新型コロナウイルスが世界中に広がり、18ヶ月で6500万人が死亡するという深刻なパンデミックだった。演習では、医療対策、貿易・渡航制限、金融システムへの影響、情報発信のあり方などが議論された。
新型コロナウイルスの発生が公式に認識される約2ヶ月前のことである。
それから約8ヶ月後の2020年6月。WEFは「グレート・リセット」を公式に掲げた。シュワブはパンデミックを「システム全体を再考する稀有な窓」と表現した。当時のチャールズ皇太子は、同じ時期にパンデミックを「黄金の機会」と述べている。
時系列を並べるとこうなる。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2019年10月18日 | WEFとゲイツ財団の共催でEvent 201実施 |
| 2020年2月4日 | HHSが公衆衛生上の緊急事態を認定。EUA発行の法的基盤成立 |
| 2020年3月27日 | HHSが医薬品・生物製剤の緊急使用を正当化する宣言 |
| 2020年3月28日 | ヒドロキシクロロキンのEUAが発行される |
| 2020年4月5日 | トランプ大統領がヒドロキシクロロキンを推奨。FDAが慎重姿勢表明 |
| 2020年4月23日 | ゲイツ「Pandemic I: The First Modern Pandemic」が一般公開 |
| 2020年4月24日 | FDA、ヒドロキシクロロキン使用の心臓リスクに関する公式警告 |
| 2020年5月22日 | ヒドロキシクロロキンが危険だとするランセット誌の論文が掲載 |
| 2020年6月3日 | 世界経済フォーラムが「グレート・リセット」を公式発表 |
| 2020年6月5日 | ランセット誌の論文がデータの真正性を保証できないとして撤回される |
| 2020年6月15日 | FDAがヒドロキシクロロキンのEUAを取り消す |
| 2020年6月17日 | WHOが臨床試験からヒドロキシクロロキンの試験を正式に中止 |
| 2020年12月11日 | ファイザー製ワクチンのEUAが発行される |
| 2020年12月18日 | モデルナ製ワクチンのEUAが発行される |
| 2022年5月3日 | ゲイツ『How to Prevent the Next Pandemic』が出版される |
| 2026年4月 | モレンス、連邦裁判所に起訴(5件の罪状) |
| 2026年8月2日 | ファウチ業務日誌が報道公開。死亡率の私的見積もり(0.2〜0.3%)が明らかに |
| 2026年8月18日 | モレンス、陰謀罪1件について有罪を認める |
緊急事態は誰のためのものだったのか?
ここまで、EUAという法的スイッチがどのように維持されたのかを見てきた。
一つの法的要件があった。「承認済みの代替治療が存在しないこと」。この条件を満たすために、ヒドロキシクロロキンに対する否定的な発信が集中した。
それとは別の理由で、死亡率の私的な見積もりと公の発言の間には乖離が生まれ、緊急事態の雰囲気が支えられた。
代替薬の排除は法的要件が直接求めたものであり、恐怖の維持は法が求めたものではなかった。理由は別々でも、両方が2020年という同じ年に走り続けた。その結果として、安全性の確認が不十分なワクチンや治療薬の緊急使用許可の環境は保たれた。
そして、この緊急事態を「稀有な窓」「黄金の機会」と呼ぶ人々がいた。
Event 201からグレート・リセット、さらにファウチの腹心モレンズの有罪認定までの時系列は、すでに並べた通りだ。
次に知るべきは、そのスイッチが入った後に、実際に何が可能になったのかである。
「承認済みの代替治療が存在しないこと」という要件は、EUA発行の瞬間だけの話ではない。ワクチンが本承認ではなくEUAのまま運用され続ける限り、この条件は満たされ続けなければならない。イベルメクチンへの否定が2021年に入って本格化したことは、この文脈で見る必要がある。
RNAワクチンの導入、VAERSの機能不全、受益者の存在、そして各国で起きた訴訟。次回、論考する。
参考文献
Just The News (2026/08/02) Fauci privately estimated COVID-19 death rate far lower than he gave Congress, diary shows
ファウチが2020年2月8日の日記に記した症例致死率の私的見積もり(0.2〜0.3%)、および2020年3月11日の下院監視改革委員会証言の原文(公表死亡率約3%、無症状例を含めれば1%程度、季節性インフルエンザの10倍致死的という発言の全文脈)を一次的に報じた記事。
https://justthenews.com/politics-policy/health/fauci-privately-estimated-covid-19-death-rate-lower-congressional-testimony
U.S. Department of Justice, U.S. Attorney’s Office, District of Maryland (2026/08/18) Former Senior NIAID Official Pleads Guilty to Charges Connected to Concealing Federal Records
モレンズが「合衆国を欺くための陰謀罪」について有罪を認めたことを発表した司法省メリーランド州連邦検事事務所の公式プレスリリース。FOIA・連邦記録法回避の共謀内容、自然起源説擁護論文執筆をめぐる不正謝礼の詳細。
World Health Organization (2021/01/01) Infection fatality rate of COVID-19 inferred from seroprevalence data(Ioannidis, Bulletin of the WHO 99(1))
血清有病率データから推定した新型コロナウイルスの感染死亡率について、51地点の中央値が0.27%(補正値0.23%)であったことを示すWHO公式誌掲載論文。
Senator Rand Paul Reading Room (2026/07/31) Bill Gates Had a Q Clearance and a Private Editor at NIH
ファウチが2022年1月、ゲイツ氏の著書原稿を「信頼できる同僚に極秘で渡し、読後に破棄させた」と自ら記していたことを示す、ポール上院議員本人によるX投稿および文書公開。ファウチの言葉の直接引用を含む。
https://x.com/SenRandPaul/status/2083295531657310573
文書アーカイブ本体:
https://www.paul.senate.gov/readingroom
FDA (2020/04/24) FDA cautions against use of hydroxychloroquine or chloroquine for COVID-19 outside of the hospital setting or a clinical trial due to risk of heart rhythm problems
トランプ大統領のヒドロキシクロロキン推奨直後に出されたFDAの公式警告。心臓リズム障害のリスクを指摘。同ページには6月15日のEUA取り消しの経緯も明記。

Indian Council of Medical Research / Ministry of Health and Family Welfare (2020/05/22) Revised advisory on the use of Hydroxychloroquine (HCQ) as prophylaxis for COVID-19 infection
医療従事者・最前線職員向けにHCQの予防投与を推奨した改訂勧告。米国・WHOが排除する方向に動いた時期と重なる。
https://meghealth.gov.in/covid/Revised%20advisory%20on%20the%20use%20of%20Hydroxychloroquine%20(HCQ)%20as%20prophylaxis%20for%20COVID-19%20infection.pdf
Federal Register (2020/09/11) Authorizations and Revocation of Emergency Use of Drugs During the COVID-19 Pandemic; Availability
2020年6月15日のFDAによるHCQ・クロロキンEUA取り消しを記録する政府公式文書。
World Health Organization (2020/06/19) Coronavirus disease (COVID-19): Solidarity Trial and hydroxychloroquine
2020年6月17日のSolidarity Trial HCQアーム正式中止の根拠を示す公式Q&A。
PubMed / The Lancet(2020年6月、撤回関連)Retraction—Hydroxychloroquine or chloroquine with or without a macrolide for treatment of COVID-19: a multinational registry analysis
2020年5月22日掲載論文が、データ提供元サージスフィア社の非協力により著者自身が「データの真正性を保証できない」として撤回した経緯。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32511943/
Johns Hopkins Center for Health Security (2019/10/18) Event 201
2019年10月18日実施のパンデミック机上演習の公式記録。ジョンズ・ホプキンス・WEF・ゲイツ財団共催。
https://centerforhealthsecurity.org/our-work/tabletop-exercises/event-201-pandemic-tabletop-exercise
World Economic Forum / Klaus Schwab (2020/06/03) Now is the time for a ‘great reset’
シュワブ本人による寄稿。パンデミックを「稀有だが狭い、世界を再構築する機会の窓」と表現した発言の一次資料。
https://www.weforum.org/stories/sustainable-development/now-is-the-time-for-a-great-reset
CNN (2021/08/29) ‘Don’t do it’: Dr. Fauci warns against taking Ivermectin to fight Covid-19
ファウチが2021年8月29日、CNNで「イベルメクチンがCOVID-19に効くという証拠は全くない」と発言した記事・動画。ロン・ジョンソン上院議員が同日、この否定的発言を、実験的ワクチンのEUA(緊急使用許可)を維持するための「代替治療不在の証明」として機能したと指摘した文脈の一次資料。





