トランプが好きかどうかは、関係ない。
問題は、誰が百年間この「永遠の戦争」から利益を得てきたか、を考えてみたい。
世界中のメディアが発狂している。「暴走だ」「危険なエスカレーションだ」。ホルムズ海峡の封鎖に対して、だ。
だが、ちょっと待ってほしい。
イランも封鎖していたよね?
そもそも、イランにホルムズ海峡を封鎖する正統性など、どこにもない。
それは世界が長年認めてきた事実だ。それでもイランが封鎖を続けるなら、トランプがイランのタンカーも通さないと宣言して対抗する。 極めてわかりやすい一手だ。
資金が尽きれば戦争は続けられない。これは、ウクライナとE3以外では常識ではないのか?
エネルギーが高騰する、と言いたいのかもしれない。
だが、その高騰で「誰が中抜きしているのか」、考えたことがある人はどのくらいいるだろう。
メディアが報道しない「目的」
2026年4月12日、トランプ大統領はTruth Socialにこう書いた。「これは世界規模の恐喝だ」。
感情的な発言ではない。
イランとの核交渉が決裂した直後、米国海軍はホルムズ海峡の封鎖を開始。イランが敷設した機雷を破壊し、国際海域での通行料徴収を阻止すると明言した。Fox Newsの「Sunday Morning Futures」への出演では、イラン海軍158隻を含む艦船・空軍・防空システムの壊滅状態を強調し、「我々は勝った」と繰り返した。
リベラルメディアは「危険なエスカレーション」と騒ぐ。だが肝心の「目的」はほとんど報じない。目的はシンプルだ——イランの石油輸出を封じ、政権の資金源を断つこと。IRGCのテロ資金と核開発を止めるための、極めて論理的な一手である。
この動きの本質を最も鋭く分析しているのが、スーザン・コキンダだ。プロメテアン・アクションが2026年4月13日に公開した動画「EXPOSED: Trump Names the ‘Hidden War’—Britain Has No Cards Left」は必見だ。コキンダはトランプの行動を「帝国への警告」と位置づけ、ホルムズ海峡を軸に長年機能してきた「英国主導の恐喝システム」を解体してみせる。本稿ではコキンダの主張を軸に、歴史的事実と最新の動きを整理する。
「保護料」のしくみ——ロイズ保険とホルムズ支配の百年
コキンダが指摘する核心は「数十年にわたる英国主導の恐喝システム」だ。
マフィアが店先の窓ガラスを割って「守ってやるから金を出せ」と脅す。ホルムズ海峡で繰り返されてきた構造は、これと同じだとコキンダは言う。
その設計図は、1916年のサイクス・ピコ協定に遡る。第一次世界大戦中、英国のマーク・サイクスとフランスのフランソワ・ジョルジュ・ピコは、オスマン帝国崩壊後のアラブ地域を秘密裏に分割した。英国は南イラクとペルシャ湾周辺を勢力圏とし、ペルシャの石油権益を確保。フランスはシリアとレバノンを得た。これは単なる領土分割ではなく、中東の石油資源と戦略的要衝を欧州列強が支配するための青写真だった。
以来、ホルムズ海峡は英国中東政策の「究極の圧力点」となった。
世界の石油輸送の約20〜30%が通過するこのボトルネックを、英国は意図的に不安定化させ続けた。紛争やテロの火種をばらまき、船舶が脅威にさらされる状況を作り出す。すると船主は「安全に通航したい」と考える—そこで登場するのが、ロイズ・オブ・ロンドンの海上保険だ。
ロイズは1688年にロンドンのコーヒーハウスで始まった世界最古級の保険市場。
数世紀にわたりグローバルな海上輸送リスクを独占的に引き受けてきた。ホルムズ海峡のような危険水域では、戦争リスク保険料が急騰する。コキンダの言葉を借りれば、これは「保護料強要の保険部門」だ。イランや代理勢力が海峡を不安定化させる行為そのものが保険料引き上げの口実となり、ロンドン・シティに巨額の手数料が流れ込む。
トランプはこれを逆手に取った。
ロイズがイラン情勢を理由に保険契約を解除・制限すると、トランプ政権は米国による代替保険の提供を推進。「すべてか、何もかもだ」とイランの石油販売を二極化し、英国式の「勝者と敗者を選別する中抜き」を拒否した。
コキンダはこれを「帝国の要衝掌握」と呼ぶ。英国首相キア・スターマーが米国の封鎖参加を拒否したのも、この敗北の表れに他ならない。
ホルムズ封鎖は単なる対イラン制裁ではない。百年にわたるボトルネック支配を崩す、構造的な攻撃なのだ。
大英帝国が「育てた」過激派という名のビジネス
中東を不安定に保つためのもう一つの道具があった。イスラム過激派の操作だ。
英国は帝国の利益を守るため、ムスリム同胞団をはじめとする過激派ネットワークを積極的に育成・利用してきた。この暗部を最も詳細に暴いたのが、マーク・カーティスの著書「Secret Affairs: Britain’s Collusion with Radical Islam」だ。カーティスは英国の公文書に基づき、1940年代以降の政策を丹念に追っている。
代表例は1953年のアヤックス作戦だ。英国は石油国有化を進めるモサデク政権を倒すため、米国と協力し過激派勢力を動員した。エジプトではナセル政権打倒のためにムスリム同胞団を後押しし、ナセルがスエズ運河を国有化した際は同胞団を「反ナセル勢力」として利用した。1979年のイラン革命後も関与は続き、アフガニスタン、リビア、シリアで過激派が跋扈する永続的な紛争状態が維持された。
カーティスの結論は痛烈だ。英国の政策は「石油利権を守るため、過激派を育て、テロの種をまいてきた」。
これは「過去の話」ではない。不安定こそが、保険料徴収と石油マネー中抜きのビジネスモデルを支えてきた。英国は自らの手で「窓を割り」、自ら「保護」を売る——この構造の中で、イラン政権もまた長年「管理された窓割り役」として機能しつつ、シティ・オブ・ロンドンのオフショアネットワークで資金を循環させてきた構図が見えてくる。
トランプの三層攻撃—帝国のネットワークを標的に
この古い構造が今、トランプ政権によって根本から揺さぶられている。
まずUAEの動きだ。2026年、UAE当局はIRGC関連の両替業者数十人を逮捕し、関連会社を閉鎖した。ドバイは長年、イランの石油収入を洗浄してクリーンなドルに変換する「オフショアの洗濯機」として機能してきた。この摘発はイランの外貨獲得ルートに深刻な打撃を与えた。
英国金融機関の関与も明らかだ。イラン国営石油化学会社は、サンタンデールUKとロイズ銀行の口座を利用して制裁を回避。フロント企業を通じた資金移動の実態が過去に暴露されている。
これに対し、米国は金融兵器を投入した。財務長官スコット・ベッセントは、スイスのMBaerマーチャント・バンクを「主要マネーロンダリング懸念金融機関」に指定。パトリオット法第311条を発動し、米国金融機関との取引を全面禁止した。同銀行はIRGCなどに1億ドル以上の資金を流していたとされる。
コキンダはこれを「核オプション」と呼ぶ。攻撃は三層構造だ。
1 封鎖:ホルムズ海峡の完全封鎖と掃海作戦。イランが敷設した機雷を破壊し、物理的な制海権を確立した。
2 兵糧攻め:ドバイの両替商摘発、MBaer指定、ロンドン拠点の暗号資産取引所やサンタンデールUKへの精査。イランの資金洗浄ルートを多方面から同時に締め上げ、政権の外貨獲得を不可能にする。ロイズによる保険引き受けの制限も、この兵糧攻めの一部だ、保険がなければ、タンカーはそもそも動けない。
3 構造解体:トランプの狙いは、イランを締め上げることだけではない。米国による代替海上保険の提供を推進することで、ロイズが百年にわたって握ってきた「誰の船を通すか」という認定権そのものを解体する。帝国のビジネスモデルを終わらせるための、最も根本的な一撃だ。
イランだけでなく、英国の「隠された戦争」ネットワーク全体が標的となった。
スターマー政権が封鎖参加を拒否したのは、帝国の切り札が失われた証左だ。英国軍最高司令官リチャード・ナイトン空軍元帥が「冷戦以来、機能する戦争計画がない」と認めたことも、米軍依存の限界を露呈している。
誰が利益を得てきたのか?
この大英帝国の中東利権構造こそ、世界から消去されるべき特権階級の利権であり、戦争継続装置だ。
地域を不安定に保ち、保険料をむしり取り、テロ組織を操り、石油マネーを中抜きする—そんな古い帝国主義のゲームに、私たちはもう付き合う必要はない。
ニュースで「ホルムズ海峡」「エネルギー高騰」と見かけたとき、表面的な対立ではなく「誰が得をしているのか」「誰が中抜きしているのか」という視点で読んでみてほしい。ロイズ保険の歴史、サイクス・ピコの影、ムスリム同胞団操作の記録—これらを知ると、世界情勢への理解が一気に開く。
トランプの行動は、単なる対イラン政策ではなく、百年にわたる「隠された戦争」の終わりを告げるものだ。中東の平和は、不安定をビジネスとする古い利権構造を解体することから始まる。
その「隠された戦争」が終わる日、世界は少しだけ公正で透明な場所になるかもしれない。
参考文献
Trump Truth Social (2026/04/12)「これは世界規模の恐喝だ」
トランプ大統領がイランとの核交渉決裂を受け、ホルムズ海峡封鎖の開始を発表した投稿。イランの国際海域での通行料徴収阻止と軍事対応の準備を強調し、「これは世界規模の恐喝だ」イランの核野心を許さない姿勢を明確に示したもの。

Fox News “Sunday Morning Futures” (2026/04/12) トランプ大統領出演
イランとの和平交渉失敗後、ホルムズ海峡の完全封鎖を発表したインタビュー。イラン軍の壊滅状態(海軍158隻全滅、空軍・防空システム喪失)を強調し、「我々は勝った」と勝利を宣言。NATOの不支持に失望を表明しつつ、米国産原油輸出による経済的優位を目指す方針を述べた。
The Conservative Treehouse (2026/04/12) “Cut Off the Money: U.S. Military Will Start Enforcing Embargo”
米軍がイラン産石油・ガスの海上封鎖を実施する背景を解説した記事。UAEによるIRGC関連両替業者の逮捕を背景に、イラン政権の資金源遮断を目的とした措置を詳述。中国への影響も指摘している。

Iran International (2026)「ドバイ、イランの両替業者を標的に」
UAE当局がIRGC関連の両替業者数十人を拘束し、関連会社を閉鎖した動きを報じた記事。ドバイがイランのオフショア金融拠点として機能していたネットワークに打撃を与え、イランに数百億ドルの損失を生む可能性を指摘している。
U.S. Department of the Treasury / U.S. Embassy in Switzerland (2026) MBaer Merchant Bank AGを主要マネーロンダリング懸念金融機関に指定
米国財務長官スコット・ベッセントがパトリオット法第311条を発動し、スイスのMBaerマーチャント・バンクをIRGC・ロシア関連の資金洗浄拠点として米国金融システムから排除した公式発表。イラン制裁回避とテロ資金提供への対処として、金融戦争の「核オプション」と位置づけられる措置。
https://home.treasury.gov/news/press-releases/sb0408
Euronews (2024/02/05)「イラン、制裁回避に英国の銀行口座を利用」
イラン国営石油化学会社が英国銀行の口座を活用して制裁を回避していた実態を報じた記事。フロント企業を通じた資金移動の事例を示し、英国金融機関がイラン石油マネーの一部ルートに関与していた可能性を浮き彫りにしている。

Promethean Action (2026/04/13) “EXPOSED: Trump Names the ‘Hidden War’—Britain Has No Cards Left” by Susan Kokinda
スーザン・コキンダがトランプのホルムズ封鎖を分析し、大英帝国が長年運営してきた「恐喝システム」(ホルムズ海峡での保護料強要、ロイズ保険の役割、金融ネットワーク)を暴露した重要論考。スターマー首相の封鎖不参加や英国軍の戦争計画欠如も指摘し、トランプ政権の多層攻撃の本質を解き明かしている。本稿の核心的な分析ソース。

Mark Curtis, Secret Affairs: Britain’s Collusion with Radical Islam (2010)
英国の歴史家マーク・カーティスが公文書に基づいて執筆した著作。1953年のイラン・モサデク政権転覆からムスリム同胞団の育成・利用まで、英国諜報機関が帝国利益のためにイスラム過激派ネットワークを操作してきた暗部を詳細に検証。中東不安定化政策の罪深さを告発する決定版資料。
Sykes-Picot Agreement (1916)
第一次世界大戦中に英国とフランスが秘密裏に結んだ協定。オスマン帝国崩壊後のアラブ地域を分割し、英国がペルシャ湾・ホルムズ海峡周辺の石油権益と勢力圏を確保した歴史的文書。以降の大英帝国中東政策の基礎となり、地域の意図的な不安定化とエネルギー支配の枠組みを形成した。
Brookings Institution (2019/01/24) “What Iran’s 1979 revolution meant for the Muslim Brotherhood”
1979年のイラン革命がムスリム同胞団をはじめとする中東のイスラム主義勢力に与えた影響を分析した論考。イランが地域不安定化の「モデル」となった歴史的経緯を概観し、英国の過激派操作史の文脈理解に有用な補足資料。




