最近の国際情勢は、衝撃の連続だ。
イスラエルがイランのサウス・パルスガス田を攻撃した直後、ドナルド・トランプ大統領は即座にこれを公に非難した。Truth Socialに「イスラエルは、この極めて重要で価値の高いサウス・パルス油田への攻撃を、これ以上行わない」と投稿し、攻撃停止を命じた。さらに、ホルムズ海峡の安全確保に動かないNATOを「臆病者」と切り捨てた。
偶発的な反応ではない。2025年12月に発表された国家安全保障戦略(NSS)を、そのまま実行に移しているだけだ。トランプは、1世紀以上にわたる英国由来の「グレート・ゲーム」―中東の不安定化を軸にエネルギー要衝を支配し、世界経済を操る構造―から米国を正式に降ろした。そして、ゲーム後の新秩序を共に築くパートナーとして、日本を選んだ。
トランプはグレートゲームから降りた
トランプの行動は、NSSの3本柱と完全に一致する。
①永遠の戦争の回避
②敵対勢力が中東のエネルギー輸送ルートを支配する阻止
③米国のエネルギー自立による要衝の無力化だ。
NSSは明確に記している。「本政権が制限的なエネルギー政策を撤回または緩和し、アメリカのエネルギー生産が拡大するにつれて、中東に注力してきたアメリカの歴史的な理由は薄れていく」。米国はエネルギー純輸出国となり、中東依存が激減した今、軍事介入の歴史的理由は消滅した。トランプはこれを忠実に実行している。
イスラエルによるサウス・パルス攻撃をトランプが即座に非難したのは、エネルギーインフラへの攻撃が「混沌」を生み、世界経済を脅かすからだ。一方、NATOがホルムズ海峡で動かないのは、集団防衛ではなく「恒久的な紛争維持」の道具だからだとバッサリ。両者は表向き対立するが、同じ「グレート・ゲーム」のために動いている―大英帝国が中東を不安定化させ、石油を経済的脅迫材料にする伝統戦略だ。
タッカー・カールソンが指摘するように、米国はイスラエルに操られているのか?
世界経済は混乱状態にあるのか?
トランプは翻弄されているのか?
答えは否だ。彼はNSSで全容を明示し、緻密に実行している。2025年12月の文書は、グローバリスト的な戦後秩序からの決別宣言だった。
イスラエルへの別れの言葉
ホワイトハウスの高官はAxiosに率直に語った。「イスラエルは混乱を嫌っていない。我々は嫌っている。我々は安定を望んでいる。ネタニヤフ? 特にイランに関しては、そうではない」。
安定を望む米国と、混沌を利用するイスラエル―目的が根本的に違う。これこそ大英帝国のグレート・ゲームの核心だ。中東を絶え間ない混乱に置き、エネルギー要衝を通じて世界を支配する。イランは「切り札」として機能し、ネタニヤフ政権下のイスラエルもその一翼を担ってきた。
だが、トランプにとってイスラエルは「特別」ではない。湾岸諸国と同列の「パートナーの一つ」に過ぎず、米国の国益と一致すれば協力し、一致しなければ対抗する。アイゼンハワーがスエズ危機で英仏に「NO」と言って以来、これほど率直にその立場を公言した大統領はいなかった。
NSSに「核心的利益は守るが、永遠の戦争は避ける」と明記し、イスラエルにも明確に線を引いた。
中東との関係見直し ― 誰が利益を得るのか
中東石油の混乱から利益を得るのは誰か?
もちろん、グレート・ゲームの受益者たちだ。1世紀以上にわたり、不安定な中東を経済的脅迫に利用してきた。イランや混乱勢力が「切り札」となり、石油価格操作や輸送ルート支配で世界を翻弄する構図は今も変わっていない。
だが、NSSはこれを終わらせようとしている。「我々は敵対勢力が中東、その石油・ガス供給、そしてそれらを通る要衝を支配することを阻止したいと考えている。同時に、多大な犠牲を払いながら同地域で泥沼化した『終わりのない戦争』は回避したい」。米国はエネルギー自立によってボトルネックを無力化し、トランプは宣言した。「ホルムズ海峡は他国が警備する」と。
中東の同盟国―イスラエル、サウジ、カタール、UAE―は「最高水準で保護」するものの、米軍の直接負担は最小化する。歴史的な関与の理由が薄れた今、米国は軍事介入から投資主導のパートナーシップへと軸足を移す。
NATOとの決別
NATOの本質が、改めて露わになった。
ウクライナ戦争を長引かせ、ロシアや中国に対して威嚇的な姿勢を保ち続ける一方で、ホルムズ海峡の安全確保のためには指一本動かそうとしない。集団防衛の名を借りた、恒久的な紛争維持装置に過ぎないのだ。
トランプが「臆病者」と痛烈に批判したことで、米国内にも亀裂が生じ始めた。長年NATOの熱心な擁護者だったネオコン・戦争屋の看板男リンジー・グラハム上院議員ですら「貢献しない同盟国には代償が伴う」と言い始め、民主党議員までもが「NATOとの関係には見過ごせない問題がある」と口にするようになった。中東での完全な不作為が、かつての超党派的な支持基盤に亀裂を走らせている。トランプが新たに作り出した言論空間だ。
NSSはこの方針をはっきりと記している。「米国はこれまで世界秩序を支えるために過度な負担を負ってきたが、もはやその時代は終わり、同盟国は自らの地域責任を果たさなければならない」。一方的な負担から「公平な貢献」へ―トランプ政権は、その原則を現実の政策に落とし込み始めている。
トランプがグレートゲームを降りる相手として、日本を選んだ
トランプは日本を選んだ。
高市早苗首相の訪米で結ばれた合意は、グレート・ゲームに取って代わる新モデルの具体像だ。
米国商務省の発表によれば、日本はGE Vernova Hitachiによる小型モジュール原子炉(SMR)建設に最大400億ドル、ペンシルベニアとテキサスの天然ガス施設にそれぞれ170億ドル・160億ドル規模の投資を約束した。深海重要鉱物資源での協力も含む。エネルギー自給の強化、原子力の復権、中国によるレアアース独占の打破―この合意はその三つを同時に意味する。
トランプは記者会見で明言した。「日本はホルムズ海峡経由で石油の90%以上を輸入している。我々は1%未満だ。だから日本がこの問題に深く関与すべき大きな理由がある」。日本はボトルネックに対して構造的に脆弱であり、米国はその「影響を受けないエネルギー源」を提供できる立場にある。
これは押しつけではない。二つの主権国家が現実的な利益で結ぶ、等価の合意だ。日本は米国の雇用に投資し、米国は信頼できるエネルギー生産基盤を得る。SMRは「グリーン・イデオロギー」の呪縛を破壊し、原子力開発の再起動を促す。深海鉱物は、中国依存という数十年来の構造問題を根本から覆す可能性を秘めている。
これはすべてNSSで予告されていた通りだ。要衝を「管理」するのではなく、「置き換え」「打破」する、―国ごと、合意ごと、技術ごとに。
2026年への期待
すべての動きは、2025年のNSSに書き留められていた。トランプはグレート・ゲームから降り、中東とNATOに「NO」、日本に「YES」と言った。
ユーラシアの視点から見れば、これは歴史的な転換点だ。日本はホルムズ依存から段階的に脱却し、エネルギー安全保障を日米同盟で再構築する。原子力と重要鉱物での協力は、グローバリズムの構造的な縛りを解く鍵となりうる。
世界は変わりつつある。英国の古いゲームは終幕を迎え、日米の新たな同盟が幕を開ける。トランプの本気は、ここにある。
日本の報道を見る限りは、高市自民党への支持や選挙圧勝も正直胡散臭いが、トランプ政権への同期とグレートゲームからの脱出が本当なら、評価したい。
参考文献
The White House (2025/12). 2025 National Security Strategy.
トランプ政権が発表した国家安全保障戦略の全文。エネルギー自立の推進により中東への軍事関与の歴史的理由が薄れること、「終わりのない戦争」の回避、敵対勢力によるエネルギー要衝(ホルムズ海峡など)の支配阻止を優先事項とし、軍事介入から投資・技術主導のパートナーシップへの転換を明記。グローバリスト的な戦後秩序からの決別を意図した核心文書で、本エッセイの全主張の基盤となっている。
https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2025/12/2025-National-Security-Strategy.pdf
Trump, D. (2026). Truth Social投稿(サウス・パルス攻撃関連)
トランプ大統領がイスラエルによるイランのサウス・パルスガス田攻撃を即座に非難し、「イスラエルは、この極めて重要で価値の高いサウス・パルス油田に関する攻撃をこれ以上行わない」と明言した投稿。エネルギーインフラへの攻撃停止を命じ、グレート・ゲームからの離脱姿勢を象徴的に示した。

Trump, D. (2026). Truth Social投稿(NATO批判)
トランプ大統領がホルムズ海峡の安全確保に協力しないNATOを「臆病者(cowards)」と痛烈に批判した投稿。NATOの本質を「恒久紛争維持の執行機関」と位置づけ、集団防衛の名を借りた不作為を暴露した。

The Economist Insider (2026/03). A Conversation with Tucker Carlson
タッカー・カールソンがエコノミスト編集長との対談で、イラン戦争を「イスラエルのタイムテーブルで始まった」「アメリカ・ファーストに反する」と批判。米国がイスラエルに操られ、外国政府の影響下で戦争に巻き込まれていると示唆し、トランプ政権との決裂を象徴する最近の発言。
https://www.economist.com/insider/the-insider/a-conversation-with-tucker-carlson
Trump, D. (2026). Truth Social投稿(軍事縮小・ホルムズ他国委譲)
トランプ大統領が中東軍事作戦の縮小を宣言し、「ホルムズ海峡は他国が警備する」と述べた投稿。米国エネルギー自立による要衝無力化の方針を現実化したもの。

Axios (2026/03/18). Israel and US have diverging objectives on Iran
ホワイトハウス高官が「イスラエルは混乱を嫌っていない。我々は嫌っている。我々は安定を望んでいる。ネタニヤフ? 特にイランに関しては、そうではない」と語った記事。米イスラエル間の目的乖離(安定志向 vs 混沌利用)を露わにし、トランプ政権のイスラエルへの「別れの言葉」を裏付ける。
https://www.axios.com/2026/03/18/israel-us-iran-war-objectives-trump-netanyahu
The Hill (2026). House Democrats see ‘legitimate problem’ with US-NATO ties
民主党のAdam Smith下院議員が「NATOとの関係には正当な問題(legitimate problem)がある」と指摘した記事。中東(イラン紛争)でのNATO不作為が超党派的な同盟疑問を呼び、米国内コンセンサスの崩壊を示す。
https://thehill.com/homenews/house/5789682-nato-allies-us-middle-east
U.S. Department of Commerce (2026/03). Joint Announcement on Japan-U.S. Strategic Investment
日米戦略投資の共同発表。天然ガス発電プロジェクト(ペンシルベニア・テキサスで計約33億ドル規模)、小型モジュール原子炉(SMR)建設(最大400億ドル規模)など、日本による米国エネルギー投資の詳細を公表。ホルムズ依存脱却とエネルギー自立の新枠組みを体現し、グレート・ゲーム代替モデルの核心。
Trump–Takaichi Joint Press Conference (2026)
トランプ大統領と高市早苗首相の共同記者会見。トランプが「日本はホルムズ海峡経由で石油の90%以上を輸入、我々は1%未満」と指摘し、日米エネルギー同盟の戦略的意義を強調した動画。
Promethean Action (2026/03/21). The Saturday Wrap-Up: Slapped Down — Trump Just Told Israel and NATO No — Here’s Why
トランプがイスラエルとNATOに「NO」を突きつけた背景を分析した記事。グレート・ゲーム離脱の文脈で日米新同盟を位置づけ、エッセイ全体の論調を補強する視点を提供。ぶっちゃけ今回のほぼネタ元、スーザン❣️いつもありがとう🤗

