ホルムズ海峡が開通しても、和平交渉が始まっても、ガソリンの値段が下がらない💢
🇯🇵日本だけかと思っていたら、🇺🇸アメリカでもそうらしい。
そんな状況に妥協しない🇺🇸トランプ政権がついに動き出した。
値下げを渋る、石油会社に司法調査が指示されたのだ。
今回は、そんなアメリカの⛽ガソリン価格をめぐる状況を論考してみたい。
ガソリン価格の非対称:上がるときはロケット、下がるときは羽根
イラン情勢の緊迫で原油価格は一時1バレル100ドルを超えた。停戦合意が進むと70ドル近辺まで急落、下落率36%。これだけ原油が落ちれば、⛽ガソリン価格も当然下がるはずだ。ところが現実は違う。
アメリカのガソリン全国平均は一時4.51ドル/ガロンまで上昇。6月下旬時点でも約3.93ドル前後にとどまり、戦争前の2.98ドルには程遠い。日本と同じく、原油安の恩恵が末端価格に届かない。
経済学ではこれを「ロケットと羽根」と呼ぶ。原油価格が上がるとき、ガソリンはロケットのように即座に上昇する。ところが下がるときは羽根のようにゆっくりとしか落ちない非対称性だ。
理由はシンプルだ。まず、精製所から消費者の給油タンクに届くまでのサプライチェーンにタイムラグがある。在庫調整や長期契約の影響も大きい。次に、石油会社が確保する精製マージンが拡大しやすい構造。そしてグローバル市場価格と国内消費価格の乖離だ。トランプ自身がTruth Socialで指摘した通り、「原油価格は岩のように落ちているのに、ガソリン価格は十分下がっていない」。
要するに、上がるときは速攻で転嫁、下がるときは渋る。これが業界の常套手段だ。数字を見れば一目瞭然。消費者には「市場の調整」と説明されるが、腹の底では「我々の取り分は守る」という強欲企業論理が働いているとしか思えない。
Drill Baby Drillは機能したのに石油会社が動かない理由
原油価格が36%も急落してもガソリン価格は十分に下がらない。その背景には、単なるタイムラグやマージンだけでなく、政策と企業の行動の乖離がある。
トランプ政権の「Drill Baby Drill」政策は、枠組みとしては機能している。連邦土地での掘削許可を前年比55%増の約6000件承認した。米国の原油生産は日量約1360万バレルと世界最大水準を維持している。規制緩和と土地開放、許可プロセスの迅速化という施策が、生産基盤を強化した点は事実だ。
問題はここから先だ。石油メジャーの対応は一言で言えば「動かない」。理由は「資本規律」という言葉で包まれているが、実態は株主への配当と自社株買いを最優先する経営判断だ。
シェブロンのCFOは「危機が計画変更を促すものではない」とはっきり言い切った。エクソンモービルも既存計画を堅持すると明言している。米国のE&P企業全体で、設備投資は前年比3〜5%減少の見通しというのが大勢だ。
政策側が規制を緩め、土地を開放し、許可を増やした。それでも石油会社は「ボリュームより利益」を選んだ。なんのことはない。規制緩和の恩恵はしっかり受けつつ、消費者への還元は後回し。自分たちの取り分を守るのが最優先なのだ。
この企業側の選択が、原油安がガソリン価格に直結しないもう一つの大きな要因になっている。次に、その影響がガソリンだけでなく物価全体にどう広がっているかを見ていこう。
物価全体を直撃する原油価格の高止まり
これはガソリンだけの問題ではない。
原油は精製されてガソリンになるだけでなく、肥料・プラスチック・化学品など幅広い製品の原料でもある。その価格が高止まりすれば、農業コスト・製造コスト・輸送コストに連鎖し、最終的に食品や日用品の価格となって庶民の財布を直撃する。
トランプ政権がDrill Baby Drillで目指したのは、まさにこのコスト連鎖全体を断ち切ることだった。国内生産を増やして原油価格を押し下げ、物価全体の価格安定につなげる狙いだ。
ここで一つの視点を提示する。石油メジャーの「資本規律」は純粋に経営判断なのか。それとも過去の記事で触れてきたテロ・プレミアム構造との関連性はないのか?
中東の混乱が25年間に世界経済から10兆ドル規模を吸い上げてきた仕組みだ。中東が安定し、ホルムズ海峡が開き、原油が下がる状況で、石油メジャーが一斉に値下げを渋る選択をする。この構図を、特定の金融勢力による景気回復妨害と疑うのは正常な思考だと思う。
庶民への影響がここまで広がる以上、値下げ渋りの問題は単なる企業行動としては許されない。
司法調査が意味するもの
2026年6月、トランプ大統領は動いた。
エクソンモービル、シェブロン、シェル、BPをに名指し、「価格つり上げだ」と断言した。
さらにトランプは、原油価格が大幅に下落しているにもかかわらずガソリン価格が十分に下がっていない点を強く批判し、「私の意見では、今、ガソリン価格で2.25ドルであるべきだ。それなのに実際はもっと高い」と具体的な数字を挙げて非難した。そして「法務省に即時調査を開始するよう指示した」ことを明らかにした。
調査の焦点は、反トラスト法と消費者保護の観点から、精製マージンの不透明さと価格設定の適正性になると見られている。
この動きの文脈は明確だ。石油業界は2024年選挙でトランプ陣営に多額の資金を提供してきた。
その「味方」から「調査対象」への転換は、単なる価格問題ではない。
より大きな構図で捉えれば、この動きはシティ・オブ・ロンドンに代表される国際金融組織を潤してきたテロ・プレミアムの構造が崩れ、ホルムズ海峡が実質的に開いた状況下で、国内の精製段階におけるマージンの不透明さにまで踏み込もうとするものだ。
長年、世界のエネルギー需給と価格を支配し、富を中抜きしてきた仕組みに対して、国内レベルでメスを入れる動きとして位置づけられる。
投資家の利益を守るだけの経営に、税金の恩恵は要らない
トランプ政権が石油メジャーに対して示した一連の姿勢は、政策の恩恵を受けながら消費者への還元を後回しにした利権屋への宣戦布告だ。
値下げを渋るヤツらへの戦いは、ガソリンの値段をめぐる話だけではない。
エネルギーという資源を支配し、富を中抜きしてきたシティの利益装置を解体しようとする作戦が始まった。
これは、戦争とエネルギーを支配し、世界中から不当な利益を吸い取ってきた帝国主義金融経済を終了させる戦いの一幕に過ぎない。
参考文献
American Energy Alliance (2026/06/24) Why Do Gasoline Prices Fall Slower Than They Rise?
ガソリン価格が原油価格の上昇時には即座に上がり、下落時には緩やかにしか下がらない「Rockets and Feathers(ロケットと羽根)」現象について、精製・流通のタイムラグや在庫調整、消費者行動を経済学的に解説。

Reuters (2026/06/24)Trump calls out Exxon and Chevron in probe over alleged gasoline price gouging
トランプ大統領がエクソンモービルとシェブロンを名指しで批判し、原油価格の下落にもかかわらずガソリン価格が十分に下がっていないとして「価格つり上げ」と非難、法務省に即時調査を指示した動きを詳細に報じた。
BBC (2026/06/25)Trump accuses big oil firms of price-gouging drivers
トランプ大統領がエクソンモービル、シェブロン、シェル、ビーピーを名指しで「価格つり上げ」と批判し、法務省に調査を命じたことを報じた記事。
https://www.bbc.com/news/articles/cly790j1j6ro
TIME (2026/06/24)Trump Calls For DOJ Probe Into Gasoline Price ‘Gouging,’ as Experts Explain Why Costs May Not Return to Pre-War Levels Soon
トランプ大統領のDOJ調査指示と、原油価格急落後のガソリン価格の非対称性(Rockets and Feathers現象)に関する専門家解説を収録した記事。
https://time.com/article/2026/06/24/trump-doj-probe-into-gasoline-price-gouging-experts-explain-timeline/
Financial Times (2026/05/01)Exxon and Chevron defy Trump pressure to boost oil production
エクソンモービルとシェブロンがトランプ政権の増産要請に対し戦略変更を拒否し、既存計画を維持していることを報じた記事。
The Wall Street Journal (2026/03/12)Peter Navarro: Iran War Will Lower Energy Prices
ピーター・ナバロによる「イラン・テロ・プレミアム」論を展開し、25年間で世界経済から約10兆ドル規模が吸い上げられたと試算した論考。
The White HouseUnleash American Energy
トランプ政権のDrill Baby Drill政策の公式概要。連邦土地での掘削許可約6,000件(前年比+55%)や規制緩和の実施状況を明記した一次資料。

U.S. Energy Information Administration (EIA)Short-Term Energy Outlook (2026年更新)
米国の原油生産量が日量約1,360万バレル水準で推移している公式統計。
https://www.eia.gov/outlooks/steo/
