主流メディアの報道は、相変わらず迷走している。
だが、イランをめぐる紛争も、終幕が近づいているように見える。
私は紛争案件を見るとき、当事者本人の発信と思える情報に集中することにしている。レバノン政府の公式発表、パレスチナ自治政府の声明、ハマス交渉団の実際の動き—こうした一次情報に耳を傾けると、事態の輪郭は意外なほど鮮明に浮かび上がる。
ところが、日本や欧米の主流メディアを開けば、まるで別の映画が上映されている。トランプ政権の和平努力はほとんど黙殺され、代わりに「不安定化のリスク」「予測不能な外交」という使い回しのフレーズが繰り返されるばかりだ。
なぜ、これほどの乖離が生まれるのか。私には、これは単なる報道の怠慢ではなく、構造的な情報操作にしか見えない。
イラン和平交渉の現実と、メディアが語らないトランプの成果
3月上旬、レバノン政府はヒズボラを非合法化し、武器の引き渡しを命じた。続いて、パレスチナ自治政府はイランを公に非難し、サウジアラビアとの連帯を改めて表明した。少し立ち止まって考えてみてほしい—イスラエルと戦っていたパレスチナ自治政府が、イランによる湾岸諸国への攻撃を非難し、サウジアラビアに肩入れしたのだ。
そしてガザにおけるイランの代理勢力、ハマスは今、トランプ政権の「平和委員会」が提示した武装解除案を真剣に検討している。
いわゆる「抵抗軸」という言説上の構造は、完全に瓦解した。イランの軍事力は粉砕され、代理勢力への補給路は断たれ、影響力は蒸発した。
この地域を数十年にわたって「管理された紛争状態」に置き続けてきた外交とは異なり、ドナルド・トランプはきわめて単純な理由から、誰も成し得なかったことをやり遂げつつある。彼は「帝国主義的な大ゲーム」に参加しない。彼は本気で平和を望んでいる—それも、実体経済の発展の上に築かれた平和を。
さて、その交渉の場に「いなかった」のは誰か、お気づきだろうか。英国外相も、欧州委員会の代表も、NATO四者会合のメンバーも、一人として席についていない。何十年にもわたって中東外交を仕切ってきた顔ぶれが、ただ不在だった。いや、軍事紛争においては「不在」どころではない—彼らは無断欠勤していたのだ。大統領はそのことを、公然と非難した。
それでも日本や欧米の主流メディアは、この歴史的な瞬間をほぼ無視するか、「偶然の産物」「短期的な妥協」と矮小化し続ける。日本のテレビニュースは「中東情勢の混迷が続く」と繰り返し、トランプの名前すら出てこない。
欧米メディアでは、依然として「トランプの強引な外交が新たな火種を生む」という論調が主流だ。実際の交渉現場で進行していること—ヒズボラの武装解除、パレスチナのサウジ接近、ハマスの現実路線への転換—は、ほとんど報じられない。意図的としか思えない。
トランプが構築しつつある新しい秩序が、旧来の利権構造にとって都合が悪いからこそ、報道は迷走し続けている。
なぜ、こうも情報は歪むのか
私たちがテレビで目にする映像は、特定の勢力の都合に合わせて編集されていると考えるのが、残念ながら妥当だろう。
もちろん、トランプ政権も批判されるべき点はある。政策の急進性や、伝統的な同盟関係を意に介さないアプローチは、議論をしてもいい。しかし、和平交渉の核心—代理勢力の崩壊と地域の安定化—を黙殺し、トランプを「予測不能なポピュリスト」として描き続ける報道姿勢は、情報提供ではなく誘導だ。
その背景には、長年にわたって中東を「管理」してきた勢力の焦燥感がある。自らの影響力が失われつつある現実を、読者・視聴者に悟られたくない。だから一次情報は切り捨てられ、欧米のシンクタンク出身者が「トランプ外交のリスク」を語る場面が連日流れる。当事者である湾岸諸国やパレスチナの公式声明は、ほとんど引用されない。
この情報格差は、メディアの怠慢ではなく構造的な問題だ。私から見れば、こうした報道はユーラシアの地殻変動を隠すための「情報のカーテン」に過ぎない。真実を直視すれば、旧秩序の崩壊は手に取るようにわかるはずだ。
エネルギーも、言い訳も、底をついた
「特定の勢力」とは、大英帝国をはじめその手足である、EU、NATO、国連である。アメリカは独立しつつある。
そろそろ力尽きるんじゃないか?
お金も、エネルギーも、もっともらしい言い訳も、底をついてきたのではないか?
少なくとも、米国とロシアが組んでエネルギーを管理し始めている状況で、中東からの欧州向けエネルギー供給は止まりつつある。グリーンエネルギー以外に何も持たないE3(英仏独)を中心としたEUは、困り果てて何をしたか—米国とロシアからのエネルギー購入を、急ピッチで進めようとしている。
今週、トランプ氏は米国が化石燃料生産において主導的地位を確立していることを示す数字を投稿した。一方、ロシア直接投資基金(RDIF)のトップであり、プーチン大統領の対米交渉の主要な窓口であるキリル・ドミトリエフ氏は、皮肉を込めてこう指摘した。「ヨーロッパはついに、環境保護と反ロシアの両方の政策が成功したことを喜べるだろう。石油もガスもないのだから。」
これは挑発ではない。物理的な事実の指摘だ。『テレグラフ』紙でさえ、「シェル社長、『欧州は数日以内に燃料不足に直面する』と警告」と報じている。EUはロンドン・シティが管理してきた湾岸諸国からのLNG供給を前提にエネルギー戦略を組み立ててきたが、その前提が崩れた。エネルギー超大国となった米国とロシアが、主権国家として堂々と資源を誇示する一方、欧州は右往左往している。
結果、EUは二度、腰を引いた。数ヶ月先延ばしにしてきた米国との7,500億ドル規模のLNG取引を今週木曜の採決に向けて急いで進め、さらにブリュッセルは「現在の地政学的動向」を理由に、4月15日予定だったロシア産原油の恒久的輸入禁止に関する採決を、こっそり取り下げた。
気候変動詐欺イデオロギーを維持する余裕すらなくなった—それが現実だ。グリーン・アジェンダと反ロシア感情だけでは、交渉の席にすら座れないというドミトリエフ氏の指摘は、まさに的を射ている。
帝国主義は詰んだ
戦争の口実は暴かれ、資金は遮断され、エネルギーは枯渇しつつある。
G7諸国は今、トランプが構築しつつある新しい世界秩序と向き合わざるを得ないタイミングを迎えた。気候変動をめぐる「終末論的な見通し」が資源を浪費してきたことは、ビル・ゲイツ自身が2025年10月の自身のブログ記事で認めている。温度上昇の抑制よりも人間の福祉の改善を優先すべきだ、と。
毎日、何かしらの嘘が剥がれていく。
代理戦争は支援者を失いつつある。ウクライナのゼレンスキー大統領がロンドンを訪れ、「私を忘れないでツアー」とまで呼ばれるほど英国にすがる姿は、その象徴だ。
英国は防衛宣言には署名できるが、石油もガスも実体経済の影響力も持っていない。ニューヨーク・タイムズですら、ゼレンスキーがイラン情勢を「非常に悪い予感」と語り、米国に和平交渉団を派遣したと報じている。
地図を見れば一目瞭然だ。「新中東」を形作っているのは、パキスタン、湾岸諸国、エジプト、トルコ—いずれも米国と現実的な関係を結ぶ主権国家たちだ。帝国主義的な支配ではなく、主権国家同士の現実的な対話が、新しい秩序を生み出している。欧州は、長年かけて自らエネルギーを確保する道を閉ざしてきた。その代償を、今まさに払っている。
国連、EU、NATO抜きで、平和は着実に前進している。トランプが率いる「新世界」は、経済的・政治的主権の原則の上に築かれている。ユーラシアの地平から見える景色では、旧帝国の影が薄れ、主権国家同士の協力が広がる光景が広がっている。この現実を冷静に見つめながら、未来のビジネスと平和の可能性を探り続けたい。
参考文献
Kirill Dmitriev (2026/03/22) “Europe can finally celebrate that both its environmental and anti-Russia policies have been a success. It has neither oil nor gas.”
ロシア直接投資基金(RDIF)総裁によるX投稿。欧州のグリーン・アジェンダと反ロシア政策が招いたエネルギー危機を皮肉を込めて指摘。
The Telegraph (2026/03/24) Shell boss warns Europe faces fuel shortages within days
シェルCEO、ワエル・サワン氏による欧州燃料危機の警告。イラン情勢によるLNG供給逼迫の深刻さを報道。
NTD (2026/03/23) EU Risks Losing Favorable Access to US LNG If Trade Deal Is Altered, Envoy Says
米国からのLNG供給停止の可能性を背景に、欧州連合(EU)が7,500億ドル規模の取引を急ピッチで進めている状況を報じている。トランプ政権が実体経済とエネルギーを外交の切り札とする中で、これまでの優遇措置を維持できなくなりつつある欧州の焦燥感が浮き彫りになっている。https://www.ntd.com/eu-risks-losing-favorable-access-to-us-lng-if-trade-deal-is-altered-envoy-says_1134009.html
Euronews (2026/03/24) EU delays proposal to ban Russian oil amid Iran war, price spikes and Druzhba row
欧州連合が、2026年4月15日に予定していたロシア産原油の恒久的な輸入禁止措置の採決を静かに取り下げたことを報じている。イラン情勢によるエネルギー価格の高騰や供給不足に直面し、これまでの反ロシア的イデオロギーを維持することが物理的に不可能になった現実を反映している。

The New York Times (2026/03/21) Zelensky Sends Delegation to U.S. Hoping to Restart Peace Talks
ウクライナのゼレンスキー大統領が、米国へ交渉団を派遣したことを報じる記事。大統領は、中東でのイラン情勢の進展が、ウクライナへの関心や支援を後回しにするのではないかという「非常に悪い予感」を公に認めており、和平交渉の糸口を求めて必死の外交を続けている状況が描かれている。
https://www.nytimes.com/2026/03/21/world/europe/ukraine-russia-peace-talks-iran.html
The Telegraph (2026/03/17) Volodymyr Zelensky’s ‘Don’t Forget Me’ Tour
ゼレンスキー大統領が、主要な支援国である英国の支持を繋ぎ止めるためにロンドンを訪問した際の様子を皮肉を込めて報じている。チャールズ国王との5度目の会談や議会演説を行ったが、英国側にはもはや実体経済を支えるエネルギー資源などの強力な切り札が残されていないことも指摘されている。
https://www.telegraph.co.uk/world-news/2026/03/17/volodymyr-zelensky-london-starmer-remember-ukraine
President of Ukraine Official Website (2026/03/17) Address by President Volodymyr Zelensky to the Parliament of the United Kingdom
ゼレンスキー大統領が英国議会で行った、2度目となる直接演説の全文記録。英国との強固な支援関係を強調し、防衛支援の継続を訴える内容となっているが、実際には英国の国際的な影響力が低下する中で、ウクライナが依存先としてロンドンを選ばざるを得ない苦境も示唆している。
Bill Gates (2025/10/28) Three Tough Truths About Climate — GatesNotes
ビル・ゲイツによる、現在の気候戦略に対する掌返し。ゲイツは、気候コミュニティに蔓延する「終末論的な見通し(doomsday outlook)」が、近視眼的な排出削減目標にばかり焦点を当てさせ、本来重要であるはずの人間福祉の改善から資源を逸らしていると指摘する。温度上昇抑制以上に人間の福祉を気候戦略の中心に置くべきだと主張し、Green Premiumをゼロにしつつ貧困国での農業と健康改善を優先する戦略的転換を提言している。
https://www.gatesnotes.com/three-tough-truths-about-climate
Promethean Updates (2026/03/25) IT’S OVER: Trump and Iran Just Shut Out the UK and NATO
トランプが中東の主権国家(サウジ、エジプト、トルコ、パキスタンなど)と連携し、イランとの和平交渉を進め、英国・EU・NATOを完全に排除した「Board of Peace」の枠組みを詳細に分析。欧州のエネルギー危機(グリーン政策と反ロシア政策の失敗)、代理勢力の崩壊、ゼレンスキーの苦境などを詳しく解説している。


